嗚呼!米国駐在員。
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2005年08月23日(火) トヨタってアメリカ車!?

「米国車」、いわゆるアメ車とは何だろうか。

基本的な定義としては、デトロイトを中心に組合労働者と米国内部品業者を使って生産しているフォード、ゼネラル・モーターズ(GM)、クライスラーのビッグスリーの自動車のことである。

一方、こうした米国車のライバルとされる日本車メーカーのトヨタ、ホンダ、ニッサン - 日本人であれば、どんなに異国の地に行ってもこうした日本車が走っているのを目にするだけで、何となく安心感が沸くことだろう。そして、自国の自動車産業を誇りに思う。


ところが、アメリカ人の中には、

「えっ、トヨタ? アメリカ車だろ。」

という輩が増えてきているそうだ。


94年の北米自由貿易協定(NAFTA)によりこれらの米メーカーはカナダやメキシコでの生産が容易になったうえ、日本車や韓国車の米国内生産が促進されたため、もはやどの車を米国車と呼ぶかの単純な線引きはできなくなった。組み立て工場がアメリカにあるから、トヨタも米国車という理解も間違いではないという見方も出来るのだが、これは日本人としては何となく納得出来ない気分ではある。


でも、実はこうした意識付けは意図されているもの、日本車メーカーによる戦略によるものである。


米メーカーの売り上げが落ち込んだ1990年代初頭には「Buy American(米国車を買おう)」運動が広がり、特に中西部では米国車以外を運転することはタブーとまで言われた。米国車のシェアを奪う日本車憎し。日本車など乗っていたらまさに何をされるか分からないムードが本当にあったようだ。わが社でも、社用車は米車限定であった。

ところが現在では、ビッグ3の不振が続いていても、米国民に「米国車を買うべきだ」という動きは見られない。逆に日本車の市場シェアは合計30%(2005年7月)と上昇している。


なぜだろうか?


この背景には、まず米メーカーがドラスティックに大胆な人員削減を続ける一方で、日本車メーカーが地元雇用を創出していることがある。日系メーカーは、ミシガンとオハイオだけで04年に9万4000人を雇用しており、その数は増加傾向にある。アメリカ人からすれば、日本車メーカーさまさまなのである。

もちろん、燃費も質も良く、維持費が低いと評判の日本車に人気が集まっているという根本的な原因はあるのだが、こうした雇用創出、また政界も巻き込みながらうまくアメリカという国を見方につけた勝利だろう。



BIG3のクライスラーがドイツのダイムラー傘下に入ったことなどで自動車の国籍があいまいになってきている。そのうち、中国車が出てくるのも時間の問題だろう。ブランドにこだわらないアメリカ人は多いから、意外と売れるのかもしれないといわれているのが、少し理解に苦しむのだけど。


Kyosuke