嗚呼!米国駐在員。
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2005年04月24日(日) イチロー革命

野球を題材にした日米比較文化論に関する著作で知られるロバート・ホワイティング。名作、「和をもって日本となす」は、私の卒論の参考にもさせてもらった。

彼の著書、「THE MEANING OF ICHIRO」を読了。日本では、「イチロー革命」というタイトルで発売されている。




まあ、野球好き、メジャー好きにはたまらない一冊。原書はいつもほとんど途中で挫折するのだけど、この本だけは、本当に読み応えがあるが、そのボリューム感をものともせずに最後まで読みきれた。

タイトルはイチローだけども、日本人メジャー選手のほとんどに焦点を当てている。著者の細かい取材力、洞察力には感服。どうでもいいけどイチローが遠征先に女を連れ込んだとかのスキャンダルまで細かく記述してある。

自分のグローブを毎日自分で磨くメジャーでただ1人の選手といわれるイチロー。野球に対する尊敬の念でプレーするイチロー、松井、野茂と、お金のためにプレーするアメリカ人選手。
この本は、日本人選手がアメリカの国民的スポーツに与えた影響、という観点で書かれており、正直、日本人としてはこれを読むと少々鼻が高くなる。

ただ、アメリカに住んでいる立場から見ると、実際は日本人選手がそこまでメジャーリーグに影響を与えているとは思えない。この本はどこまでアメリカで売れたのだろうか、と思ってしまう。
確かにメジャーの日本人は、日本プロ野球における韓国や台湾の選手よりかは、影響は大きいとは思うけど、メジャーの野球を変えてしまうほどの影響力というのは、少し違うだろう。

生粋のアメリカ人からすれば、コツコツ単打を重ねるイチローよりもやっぱりホームランを量産するボンズだろうし、フォークの野茂や佐々木よりも、ストレートでビシッと勝負できるクレメンスなんだろう。日本人が数年活躍しただけで、長い歴史を持つアメリカの国民的スポーツは揺るがない。

この本は、人生の大半を日本で過ごし鎌倉に居を構える著者の日本に対する思い入れもあるのかもしれない。でも、アメリカ人に対してここまで奥深く日本人選手、日本プロ野球の本が書けるのは、やっぱりロバートホワイティングしかいない。

保存版の一冊。


Kyosuke