嗚呼!米国駐在員。
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2004年03月14日(日) 「Lost In Ttanslation」はよかった

近所の店で気になっていたDVD「Lost In Translation」を19ドルで購入。たまっている他のDVDには目もくれずに早速観てしまった。

ゴッドファーザーのフランシスコッポラの娘、ソフィア・コッポラの監督2作目。東京を舞台に27日間のロケ、TIME誌によれば400万ドル(約4億8千万円)とも言われる低予算で撮り上げたという。
ストーリー自体は、悩める中年役者(ビル・マーレイ)と若き人妻(スカーレット・ヨハンソン)が、異国の地、東京で交流するだけの、これといって大きな展開があるわけではない。しかし、二人の微妙な心の揺らぎを、鮮やかな東京の夜景を交えながら浮き彫りにしており、全く飽きさせなかった。
懐かしのカラオケ、パチンコ、新宿のネオン、ゲームセンターというジャパニーズ・カルチャーは、アメリカ人にとっては驚きの連続。また、そこに集まる人の行動一つ一つが、アメリカ人にはたまらなく可笑しくもあり、ストレスとなるようだ。この作品、コメディーとしても成立している。

スカーレット・ヨハンソンが演ずるシャーロットの、自分は日本で1人残されて何をしているのだろう、これからどこへいくのだろう、という20歳代女性の焦燥感がよく伝わる。彼女は演技派というより雰囲気で魅せる事の出来る女優と思う。とてもかわいらしかったな。

見慣れた風景の新宿歌舞伎町、渋谷駅も、東京に住んでいた頃は単なる日常であり何とも思わなかったけど、こうしてみるとこんなに美しいものかと改めて感動。もちろん日本語のセリフがたくさん出るのだが、劇場では一切字幕なし。意味が分かる日本人ならもっと楽しめるだろう。

一部評論では、この映画での日本人の描かれ方が「人種差別的なステレオタイプの描写だ」として反発する議論があったようだ。ただ、よくある2流映画の日本描写ではなく、多少誇張の部分は当然あるけども、逆によく特徴が捕らえられているな、と思う。 それに、そもそも映画自体が「白人が日本人を馬鹿にした映画」ではなくて、「ある種の異文化感性をもった人たちが、そうではない多くの人たちの世界に入ってしまい、秘かな連帯を試みる」という類の映画であると思うので、そんな些細な事に目くじら立てる事ないと思うんだけど。

登場人物が感じる異文化に入り込むストレスは、実によく共感した。ただ、日本人がアメリカに行くよりも、アメリカ人が日本に入って行く方が、はるかに厳しいだろう事は、映画を観て感じた。夏ごろに日本に初めて出張する予定の、うちのスタッフにぜひ見せたい映画である。

それにしても、久しぶりの(といってもたかだか1年だが)東京の風景は本当に良かった。コッポラ監督の描写が、そう感じさせたのだろうか。 住んでいた時は‘嫌な東京’だったのが、ここまで捉え方が変わっていくと、やっぱり自分にとってはイイ映画だったんだろう。赴任以来、1度も戻りたいと思った事はないけども、この映画を観て、東京行ってみたいな、と純粋に思った。ストーリーそのものよりも、そんな感覚を観るものに喚起させる力のある映画であった。

そうそう、主人公が藤井隆(マシューとか言ってたな)の番組にゲスト出演するシーン。
これは最高だった。藤井隆のパワーは久しぶりに見ると、実にすさまじい(誉め言葉)。DVDでは、ボーナスでこのシーンの特集があったけど、大いに笑わせてもらった。


Kyosuke