嗚呼!米国駐在員。
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2004年01月18日(日) KAFKA ON THE SHORE

予定通り今朝は11時に起床。どうせ外はいつものように灰色だし、特に予定もなかったのでもっと寝てもよかったのだが、夜になって「なんと無駄な1日か」と後悔するのも嫌なので起きる。

昼からは久しぶりにスポーツジム、LIFETIME へ向かう。
日本でもジムには通っていたが、当たり前だが規模が全く違う。はじめてみたときはその駐車場と建物の大きさから、冗談抜きでどこかのショッピングモールかと思った。ここで、いわゆる有酸素のマシーンが400台ほどあるのだが、前方の大画面(10画面くらい。MTVとかスポーツチャンネルとかが常時放映)を見ながら、ウォーキング。15分かけて1マイルをゆっくりと走る、いや歩くか。
たまたま昨日、同じく昨年赴任したロスの駐在員と話したが、お互いアメリカに来て全く歩く事がなくなった事に対する不安をもっていた。赴任して8-9ヶ月で歩いた距離は、東京時代の1週間分に相当するかどうか、とも言っており、これはおおげさにしても、間違いなくAMERICAでの歩行距離はほとんどない。 朝は自宅ガレージからそのまま会社のガレージへ。昼飯も店のまん前のガレージへ。 まあ国土が広くて車社会、どこでも駐車場は余るほどあって、当初はなんて便利だろう、と思ったものだが、こうも歩かないと知らぬ間に足の筋肉が退化しているんじゃないかと不安になる。(実際にかなり衰えているはず)
という訳で、無理に歩く機会を見つけねばならないのも、不思議なものだ。たかだか1マイルだけで早くも疲れてしまうが、久しぶりにうっすら汗もかき、身体が甦ってくる気がした。
それにしても、ダンベルコーナーで鏡の前で自分の肉体美にうっとりする輩は、日本もアメリカも変わらないな。

その後は、ASIAN NUDOLE というベトナム麺の店でフォーを食べる。
従業員もてきぱきとしており気持ちがいい。うちの会社の米人スタッフのおばさまが、アジア系の店はゆっくりできないから嫌いだ、と言ってたが、たかだか麺を食べるのに、40分も50分もかけてるのがおかしいんちゃうか、と思う。概して、アジア系の店は回転も早いように感じて、われわれ日本人も居心地がよい気がする。

「海辺のカフカ(上.下)」(村上春樹著)読了。
日本人向け本屋では下刊しか見当たらず、またえらく高いので、岐阜の田舎の両親に頼んで送ってもらった。ちなみに、両親は御丁寧に実家に残していった村上春樹の小説を数冊一緒に送ってくれたが、なんと発送料が1万円近くもしていた。こんなにかかるんだったらこちらで注文して買った方がよかったかな。悪いことをしてしまった。後で聞くと、両親が住むのは小さな田舎町なので、ダンボールでアメリカまで荷物を送るというだけで、応対した郵便局員もあわてふためき大騒ぎだったようだ。(これも親孝行と勝手ながら思い込む)

村上春樹は、学生のころはさっぱり理解できなかったが、働き出して自分も多少は成長したのかよく分かるようになってきた。何度も読み返して新たな発見が出来るところが気に入っている。
内容は、15歳の家出少年の物語だが、全体を通して「一旦起こってしまった事は元にもどらない。昔を懐かしがったり自分に同情するよりも、新しい世界と向き合ってそこで頑張るしかない」というようなメッセージを感じた。まさに自分のおかれた立場にもあてはまり、共感を得た。
状況は違うが、自分も希望かどうかは別にしてともかく会社の命令で米国駐在となった。
当然だがはじめての異国で、商売から生活からうまくいかないことばかりだ。赴任後数ヶ月は、過去の自分から断ち切ることが出来ずに、自分は日本ではこうだったのに、とか、相手が悪いのだ、とか、何でこんなところで働かねばならないのだろう、と思い込んでしまう事が多かった。でもこれじゃ駄目なんだよな。
もう自分は別の世界に足を踏み入れてしまったのだから、ともかくそこで頑張ろう、改めてそのような気持ちにさせてくれた。

米国に来てから、なかなか手に入らない日本の本が読みたくて読みたくてしょうがない。なんで日本にいるときにはこんな気持ちにならなかったのだろうか。


Kyosuke