2003年07月14日(月) |
夏が終わるとき(日大vs慶應義塾) |
初めて見る光景だった。 慶応義塾高の鹿内智行捕手(3年)は両腕を組み、試合終了の挨拶に臨もうとしていた。視線は前を見つめている。「怒り」に満ちているような眼だった。 主将である鹿内は、腕を組んだまま整列する部員に目を向ける。全員が揃おうかというとき、両腕は下げられ、腕組みはとかれた。 日大高校の校歌を聴くため、ベンチ前に並ぶ。涙を流す選手、放心状態で視線を空にやる選手……、鹿内は少し右足に体重をかけ、両手を腰に当てていた。校歌を聴く間、その姿勢が続いた。 校歌を聴き終えると、応援席へ挨拶に向かう。鹿内の掛け声で、挨拶が始まり、終わる。真っ先に頭を上げたのは鹿内だった。そして、足取りの重い、ほかの選手に見向きもせず、誰よりも早くベンチに引き返してきた。 少なくともグラウンド内では、鹿内に涙はなかった。あったのは、「怒り」のように感じた。 前評判では有利といわれながらも、11対1と日大高校にまさかの完敗。誰もが予期していなかった、負け方だった。とくに鹿内は、先制点をパスボールで献上。5回と9回には打撃妨害を犯し、日大に追加点を与えるきっかけを作った。 チームも鹿内も、「最後の夏に何もできずに負けた」と言ってもいいほどの試合内容だった。
3年生にとって最後の夏が終わるとき、グラウンドで悔し涙を流す選手が圧倒的に多い。ときには、満足感、充足感から、すがすがしい表情を浮かべる選手もいる。だが、鹿内のように、怒りを表すような態度を見たのは初めてだった。
昨年の夏の終わりは7月25日の東海大相模戦だった。 今年はそれよりも10日以上早い、7月14日。あまりにも短すぎる夏が終わった。
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