2002年07月27日(土) |
桐光学園全国制覇を目指し(8) 河合満塁HR!決勝進出! |
横浜スタジアムで準決勝2試合が行われ、桐光学園は平塚学園を8−4で破り、3年連続4度目の決勝へ駒を進めた。明日は桐蔭学園を8−1の7回コールドで下した東海大相模と決勝を行う。2年連続準優勝の桐光学園が初優勝を飾るか、24年間夏の甲子園から遠ざかっている東海大相模が25年ぶりの優勝を遂げるか。明日、2002年神奈川の夏が幕を閉じる。
平学先発、柳川の立ち上がり。いつものように制球が定まらない。準々決勝の日大藤沢戦でも、コントロールはバラバラで「好投手」という前評判が信じられないぐらい最悪の出来だった。初回に4失点。どうなることかと思ったが、2回以降は立ち直り、9回までゼロを並べた。 柳川を攻めるには、制球が不安定な立ち上がりを捕まえること。今日の桐光は、完璧に実践した。
桐光は初回、先頭照沼のヒットを足掛かりに1死満塁のチャンスを作り、5番代のライトへの犠牲フライで1点を先制。なおも6番船井がライト前ヒットで2死満塁とチャンスを広げると、打席には7番河合。背番号10を着ける控え投手でありながら、打撃を買われて全試合スタメン出場(城山戦は投手として)を果たしている。河合はカウント2−2から、甘く入ったスライダーを完璧に捕らえ、打球は高々とレフトスタンドへ吸い込まれていった。値千金の満塁弾。5−0とリードを広げた。
「スライダーを待っていました。その前にスライダーをファウルで粘っていて、自然とタイミングが合うようになっていました。ホームランは全然狙ってないです。これが公式戦初めてのホームランですから」
河合は日大藤沢戦を球場で見ながら、インコースのスライダーに腰を引く、日藤の打者が目に付いた。「腰を引いてはスライダーは打てない。とにかく踏み込んで打とう」と柳川攻略法を考えていたという。攻略法を見事にやってのけた。
2回表、2死満塁。またまた河合に打順が回ってきた。ピッチャーは2番手の松本。河合はストレートを詰まりながらも弾き返すと、高いバウンドでショートの横を抜け、センターへの2点タイムリーとなった。横浜スタジアム特有のいわゆる「人工芝ヒット」だった。これでひとりで6打点。河合の活躍で勝負を決めた。
「今日の第一の勝因は河合です」 試合後、野呂監督は言い切った。それほど素晴らしい河合の活躍だった。しかも全て2死からの打点。大きな大きな追加点をもたらした。
3回戦の城山戦のあと、野呂監督はこんな話をしていた。 「これからの戦いの中で、ラッキーボーイが出てくると、監督としては非常にありがたい」
今日の試合、ラッキーボーイは言うまでもなく河合だった。それ以前から、河合には運があった。準々決勝の相洋戦のあと、「前の試合までのラッキーボーイは河合。引っ掛けた辺りが内野安打になったり、良い所に飛んでいったり、相手がエラーしてくれたり、ラッキーな面が多い」と野呂監督。記録を見てみると、5回戦の法政二戦では2度のエラーで出塁もしている。「河合は実力はもちろんあるけど、そういったラッキーな部分もチームにとって必要」と話していた。
ラッキーボーイ。言葉だけを見ると、全てが運に左右されているようだが、もちろんラッキーボーイになるには、それだけの準備が必要だ。
相洋戦。野呂監督はラッキーボーイに内藤を挙げた。 望月が太ももを負傷したあと、3回の守備から2番センターに入った。6回に回ってきた初打席、ショート内野安打を放ち一塁に出塁。決して良い当たりとはいえなかったが、一塁へ全力疾走を見せ、内野安打を掴み取った。次ぐ3番佐藤がセンター前ヒットで1死一、三塁とチャンスを広げると、打席には4番山田。山田はカウント1−1からスクイズ。三走内藤が一瞬早く、ホームに滑り込み、先制点を挙げた。結局、この1点が決勝点になった。 内藤は8回の第2打席では一塁ゴロ。と思いきや、一塁の失策を誘い、またしても一塁へ生きた。この打席では相手投手に10球を投じさせる粘りも見せた。望月の負傷を埋める見事な活躍を見せた。
「望月に代わって試合に出るとき、絶対に活躍してやろうと思いました。前の日のミーティングで監督に言われたんです。『明日からの3試合は今まで一生懸命練習してきたやつが活躍する』。自分はそれだけの練習をしてきたと思ってますから、自分を信じて、絶対活躍できると思って、試合に出ました」
野呂監督がよく口にする言葉がある。 「試合の前にどれだけ準備をするか。簡単に言えば、練習で変化球を打てない選手が試合になって突然打てるわけはない」
初戦の商大戦。中盤に1死一、三塁というピンチがあったが、落ち着いた守備で無失点に切り抜けたシーンがあった。 「大会前の合宿で選手が自主的に一、三塁での守備練習をやっていたんです。事前に練習してきたことですから、あの場面も落ち着いてできたのだと思います」
河合と内藤。「ラッキーボーイ」として野呂監督が名前を挙げたふたり。活躍できるだけの準備を、しっかりとこなしてきた。
「ラッキーボーイが出て欲しい」という監督の言葉が、大事な準決勝で、これ以上ない形で現れた。最高の形で、決勝へ臨むことができる。
決勝に向けて、野呂監督の言葉。 「3年連続で決勝という舞台に立てることが決まって、うれしい。大会前から『7つ勝とう』と選手には言ってきた。明日が7つ目の勝ち。先走りの気持ちにならないで、気楽に臨みたい。明日はよほどのことがない限り、清原で行きます」
約1年前、新チームはブロック予選、初戦黒星という最悪なスタートで始まった。石井、藤崎ら主力がごっそりと抜け、「今年の桐光は弱い」というイメージがたった。それでも、秋ベスト4、春もベスト4に入った。
迎えた夏。「桐光はダークホース」。そんな前評判ばかりの中、足を使った攻め、1点を凌ぐ守備、新しい桐光のスタイルでひとつひとつ白星を重ねていった。 結果、3年連続で決勝へ駒を進めた。
「毎晩、優勝して清原と抱き合うシーンを夢見ている」という船井主将の言葉。明日横浜スタジアムで、夢を現実に変えることができるか。
夏の甲子園まで、あと1勝。
|