2002年04月13日(土) |
先を見据えて(東京大vs慶応大) |
六大学野球が開幕した。 開幕カードは東大対慶大。東大は先発に4年生エースの浅岡ではなく、2年生の松家を持ってきた。思い切ったことをやるなと、私は思った。いくら期待されている松家と言えども、開幕は経験のある最上級生をマウンドに送り出すと思っていたからだ。
松家は高校時代、プロのスカウト陣に注目されたほどの逸材。昨年は受験勉強による調整遅れのため、公式戦での登板はなし。しかし、秋の新人戦では法大戦に先発し、好投。期待に違わぬ投球を見せた。今年は開幕前に行われた六大学・社会人対抗戦で最速142kmのストレートを見せるなど、順調な調整を続けてきた。 毎年のごとく劣勢を強いられるリーグ戦だが、今年は違う。松家の力で、旋風が巻き起こるのではないか。そんな期待を抱かせてくれるシーズン前だった。
開幕戦。もうひとつ驚いたのは、松家の恋女房に同じ2年生の松尾を指名したことだ。東大は現在、正捕手の河原がケガでプレーできず、オープン戦では4年生で主将の長嶋と、松尾が代役を務めていた。監督は開幕戦に松尾を選んだ。松家と松尾、2年生同士の若いバッテリーである。
試合は松家が味方守備陣に足を引っ張られる場面が目立った。松家自身も決して調子が良いわけではない。ストレートは135kmを超えるあたり。変化球もすっぽぬけが多かった。でも、そこは松家。要所を締め、大量失点は与えなかった。 7回を投げ、被安打4、三振5、四死球6。失点は5だが、自責は1。被安打4もクリーンヒットは1本もなく、詰まった当たりが目立った。しかし、結果は結果。5点を失った。エラーが重なり、バッテリーミスは幾度となく起こり、松家がマウンド上で煮え切れない表情を浮かべるシーンばかりが目についた。松家と、周りの8人がバラバラになっているようにも見えた。 0−8。東大は開幕戦を落とした。
「今後のためにも、若いバッテリーで臨みました・・・。結果は結果でしょうがないです」 ベンチで、時にはブルペンで試合を見守り続けた長嶋主将は、試合後サバサバした表情だった。でもその中には、2年生バッテリーに懸ける強い思いも伝わってきた。 先発マスクをかぶった松尾は、「首脳陣の期待は感じている。残りの試合でそれに応えられるようにしたい」。
今日の試合、はっきり言って、東大と他校のレベルの差があまりにも開き過ぎていることを認めざるを得ない試合内容だった。「正直、1勝するのは難しい」と東大のある部員は険しい表情で話した。 松家という、東大野球部史でも稀にみる逸材を擁す今年の東大。でも、彼ひとりでできることは限られている。まずはキャッチャーを育てる。主将の長嶋ではなく、あえて2年生の松尾を起用し、そしてあえて松家に開幕戦を任せた。まだリーグ戦は始まったばかり。松家が東大の中で、「浮かない存在」になったとき、他校にとって東大は脅威になるはずである。
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