加藤のメモ的日記
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2023年05月18日(木) |
惨めな死に方をする人には共通点があった |
「兄さんが引き取ればいいじゃないか」「それは無理だ。お袋だってお前をかわいがっていたんだし、お前が面倒を見るべきだ」病室の外で言い争っているのは、森京子さん(享年86・仮名)の二人の息子である。肺がんを患った森さんは、この時点で約2か月半にわたり入院していたが、病院側からは「3か月を目安に退院する決まりになっている」と再三圧力をかけられていた。
長男の卓也さん(59歳仮名)は語る。「たんの吸引やオムツの交換をしなければならないことを考えると、一人で家に帰すわけにはいかない。結局、一時的に私がお袋を預かることになりました。通帳を見せてもらうと、預金はほぼゼロ。年金はすべて医療費に消えていました」しかし、その一か月後、森さんの容体が急変し、再度の入院となった。一命を取り留めたものの、再び浮上したのが「誰が親の面倒を見るか」という問題である。
早くも介護に限界を感じていたし、費用負担への不満もありました。また入院が3か月に及べば、兄弟で親を押し付けあうことになっていたでしょう」(卓也さん)再入院から3か月後、結局、母親は病院で息を引き取った。その時のことを卓也さんは「不謹慎ですが、母親が病院で亡くなった時に、正直ほっとしたんです」と振り返る。
人生の終末期をどこで過ごし、どう旅立っていくのか。何も決めておかなかった人は、最後の最後に周りに迷惑をかけて死んでいくことになる。しろひげ在宅診療所院長の田中氏は語る。「自宅で最期を迎えたいなら、行政が委託する居宅介護支援事務所と呼ばれる相談所を訪ねましょう。例えば当院のある江戸川区であれば『熟年相談室』という名称です。ここでケアマネージャーと相談しながら、在宅見取りが可能な診療所を探すのです」
一方、介護施設で最期を迎えたい人もいよう。各自治体の、窓口で核施設の重要事項説明書を入手し「認知症になっても入院し続けられるか」「看取りを担当する常勤医師はいるか」を確認し、現地に足を運んで見学を済ませておくべきだ、死ぬ場所だけでなく、死に方も決めておかないと、悲惨な最期は免れない。前出の田中氏は語る。「在宅診療で難しいのが、延命治療をするかどうかです。90歳を超えて自然と食事が摂れなくなった人であれば、無理に点滴をすると痰が絡んだり。心臓に負担がかかったりします。医者によっては、足がむくんでも利尿剤を注射して無理やり点滴を打つ人もいます」
そんな様子を傍らで見ている家族も「延命するか、中止するか」という究極の選択に苛まれる。だからこそ、「自分が食べられなくなった時は胃ろうはつけなくてよい」「血を吐いて意識が亡くなった時は輸血をしない」など、具体的な希望を事前指示書として残しておけば、家族からも感謝されるだろう。
その他、葬儀の準備や病状の告知についても、悲惨な終わり方をした人には、準備が足りなかったという共通点がある。どうやって最期を迎えるが決めてほしい。
『週刊現代』7.10
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