加藤のメモ的日記
DiaryINDEXpastwill


2016年10月03日(月) 「ポケモンGO」生みの親の開発理念

20167月22日に日本でも配信がスタートした「ポケモンGO]は、瞬く間に、新たな社会現象ともいえる熱狂的なブームを世界中に巻き起こした。任天堂の株価高騰や新たな集客手段としての活用事例は「ポケノミクス」とも呼ばれてその経済効果に期待が高まる。その他、うつ病など精神疾患への効果云々の話や、過度な没入による事故・事件の話など。巷は盛りだくさんな話題で溢れかえり
まさにお祭り騒ぎだ。

ツィッターやフェイスブックのタイムラインもポケモンGO関連の投稿で埋め尽くされ、それらを見ていると、普段、スマホのゲームとは無縁の年配者も目立つ。このポケモンGOの開発を行った米ナイアンテイックは、2010年にグーグルの社内ベンチャーとしてスタートし、15年に独立したベンチャー企業だ。スマホのGPS機能とグーグルマップをベースに、「この世界には世界制覇を競う二つの勢力がある」という設定で、地図上の仮想の拠点を実際に訪ねながら、緑組と青組に分かれて奪い合う陣取りゲーム「イングレス」を開発した。

ポケモンGOの前身ともいえるもので、世界中で1400万以上のダウンロードされ、現在もユーザー数を増やし続けている。先日は東京お台場で1万人以上のプレイヤーを集めた盛大なイベントも開催された。

自分の足で冒険しよう

そのナイアンティックを率いるのがジョン・ハンケン氏だ。同氏はもともとキーホールというベンチャー企業で、衛星写真を使った地球儀のアプリを開発していたが、2004年にグーグルに買収され、それがグーグルアースとして製品化された。グーグルでは地図製品全般を統括する副社長として、グーグルマップやストリートビューなどの開発・普及に尽力した。ちなみに、グーグルの地図製品には日本チームの貢献が大きい。ナイアンティックにも、川島優志氏、河相敬一氏、村井説人氏の逸材が転出して活躍している。

ハンケ氏は、テキサス州の人口1.000人程度、ほとんどが農家か牧場経営者という小さな村の出身。「いつか外に出て世界を見たい」という強い思いを持ちながら育った。数学の先生の影響でプログラミングに目覚め、アタリ・コンピューターの4ビットや8ビットマシンでゲームなどを自作していたようだ。テキサス大学を卒業後、米国政府の仕事を経てカリフォルニア大学バークレイ校でMBAを取得。その後、企業家として活動を始めた。

グーグルアースやグーグルマップ、ストリートビューなどでは、コンピューターの前に座ったまま世界中どこにでも行けるバーチャル体験を実現するアプリケーションを手掛けてきたが、ナイアンティックでは、逆にスマホを片手に自ら外に出かけてリアルな世界を体感するアプリケーションにこだわった。自分の足で冒険しよう、が理念だ。自分の子供が家にこもってゲームにばかり興じている姿を見て、「もっと外に連れ出したい」と思ったことがきっかけになったという。

インプレスに加え、ポケモンGOの登場で、人類は拡張現実(AE)が作り出す新たな一歩を踏み出した。家から出ることがなかった人たちが、外に出て歩き、移動し、会話し、実際の世界を見る、ということはそれだけでも素晴らしい。ナイアンティックがポケモンやユーザーと共に切り開く未来に期待したい。


『週刊文春』8.4


加藤  |MAIL