加藤のメモ的日記
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2015年06月11日(木) 野村克也 野球は頭の使い方で決まる ��

キャッチャーとは何か

私は打者だけでなく、キャッチャーとしても頭を使い続けてきました。そもそもキャッチャーとは何か。私が考えるに、キャッチャーは「守りにおける監督の分身」であり、「野球というドラマの脚本家」でもある。キャッチャーには、試合中、実は実は監督以上の仕事が求められています。いかに有益な情報を事前に仕入れ、それをもとにサインを組み立てられるかが、勝敗を左右するからです。ですから、14年間捕手を務めた安部慎之助が今年から一塁に転向してしまったことが残念でなりません。

捕手には3つの力が求められる。「観察力」「洞察力」そして「記憶力」です。入団直後の安部は、打者の動きに対して鈍感で「見えない」「感じない」捕手だと歯がゆさを覚えていたが、彼は捕手として4度の日本シリーズを経験して、確実に成長していきました。日本シリーズは捕手にとって一球たりともおろそかにできない決戦の場で、たった1球、根拠のないサインを出したことで、主導権を失い、敗北につながる危険性を秘めている。その緊迫感の中で安部は学んだと思います。

安部のような捕手を新たに育成することは簡単ではない。最低2年、3年かかる。捕手は「見えないものを見る」ことが仕事だからです。彼は打者として選手生命をのばすよりも、名捕手としてプレーを続けてほしかったと思う。目の前をボールが通過したときに、打者がどんな反応をするのか、捕手は右目でボールを受け、左目で打者の反応を見なければいけない。打者がどんなボールに狙いを粗絞っているのか、感じ取る洞察力が不可欠なのです。

私はヤクルト、阪神、楽天で監督を務めていたとき、どの捕手にも「根拠ないサインは出すな」「今の1球の根拠を教えてくれ」としつこく言い続けました。その中から古田、矢野、嶋らが成長した。とくに楽天の監督を務めていたときは、嶋の他に藤井や中谷らがいたが、正捕手を誰にするかを決めきれなかった。そこで実はマネージャーにお願いして、彼らを含めたキャッチャー陣の中学時代の通信簿を調べてもらったのです。

すると嶋は5段階評価で「オール5」だった。勉強ができることがわかり、それが「彼を正捕手に育てよう」と決めるきっかけになったのです。彼は慎重な性格で、勝負どころで投手に要求するサインが外角低め直球の一辺倒になることがある。怖がらずに思い切って相手打者の内角をえぐる度胸が欠けている点が課題ですが、2年前の日本シリーズを経験して日本一に輝いたことで、名捕手への階段を上り始めました。



『週刊現代』4.18


加藤  |MAIL