加藤のメモ的日記
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これから第一章から第四章まで、中東イスラム国家をめぐる旅に出ようと思う。この旅路において我々はそれぞれの国の宝石箱を開き、歴史を調べる。摂りだした宝石の輝きには、血みどろの紛争と戦争の影が映っている。そのイスラム社会で過去に起こり、現在起こっている紛争を知るには、イスラムについて書かれた良書だけを読んでも理解できない。彼らの土地に侵入し、彼らを欺き、彼らを苦しめた相手が誰であるかを知ることが、いま何よりも必要である。
すでに現在、アメリカは傲慢で間違っている、との意見が世界中に蔓延している。しかしその国民を誰が誘導しているかが問題になる。大統領ではない。多くの識者が、国家あるいは組織によって、事件の解決を試みてきた。が、歴史の内部で大きな事件を動かしてきたのは、あらゆる経済活動がそうであるように国家という抽象的なものではない。すべての国に、国家ではない生き物として、有数の個人がある。その個人が動いて、このような事態を生みだしてきた。その個人の追及をせずに、アメリカが憎い、アメリカは間違っている、イスラム教徒が憎い、イスラム教は間違っている、これでは知識に進歩がない。
第一章では、入り口に最大のパレスチナ紛争がある。数千年来そこに住んでいたパレスチナ人は、1948年のユダヤ人国家イスラエルの誕生によって追い立てられ、半世紀後の今も自分の国を持つことができない。アメリカの仲介によって、二度にわたる中東和平が語られながら、実際にはパレスチナ人はずっと欺かれた来た。国連は、イスラエルに対して、たびたび占領地からの撤退を決議し、ユダヤ人の占領地入植を禁じながら、パレスチナ人の都である東エルサレムは、ユダヤ人によって占領されたままである。イスラムの聖地は公然と冒瀆され、他人の領土であるパレスチナ自治区にイスラエル軍が侵入して、畑を戦車で踏みにじり、住宅を破壊し、住民には日常の通行さえ自由が許されない。
それに抵抗するゲリラ戦を試みれば、事情を無視する国際ジャーナリストによって、テロリストの汚名を着せられる。和平を公然と否定し、パレスチナ国家の樹立を否定するイスラエルのアリエル・シャロン首相は、すでに1982年にパレスチナ難民を虐殺した犯罪を問われてきた。アメリカではユダヤ人ロビイストが強い圧力をかけて、次官クラスの官僚が歴代のホワイトハウス大統領を自在に操ってきた。この問題を放置した最大の責任は、国連にある。日本人もまた、国連加盟国として重大な倫理的責任が問われなければならない。
第二章では、世界最大の石油埋蔵量を誇るサウジアラビアの砂漠を訪れる。そこにある史実は、『アラビアのロレンス』に描かれた物語とは大いに異なる。イギリスを欺きながらアメリカのスタンダード石油トラストとテキサコが広大な油田地帯を獲得し、アラムコという虚像の如き石油会社を設立して第二次世界大戦中に軍事基地を建設した。世界最大の建設会社ベクテルとCIAが暗躍して死の商人アゴナン・カショウーギを創りだし海運王オナシスと日本のアラビア太郎と一匹狼ポール・ゲッテイーが、敢然と彼らに挑戦した。石油相ザキ・ヤマニが活躍したOPEC大動乱時代を経て、現在もまだサウジアラビアとアメリカは、油田と原油価格をめぐって激しい戦いを繰り広げている。
建設富豪ビンラディン・グループに続いて、サウジ大富豪スリマン・オラヤンとビンマーフーズが台頭し、イスラム金融がアメリカのウォール街を一夜にして崩壊させることのできる資金力で投資を続けているのである。この動乱の時代を貫くのは、アラビア半島を征服したサウジ王国建国者イブン・サウドの哲学である。
第三章では大産油国イランとイラクに侵入したイギリス人と、アメリカ人の撤退と憎悪の歴史をみる。アルキメデスの原理と蒸気船の発明が石油タンカー時代を生みだし、ロイター男爵がペルシャ帝国銀行を設立したと見る間に、アメリカのメロン財団が動き、イギリスのロイド財閥とベアリング、ブラザーズが動いた。世紀の秘密カクテル”赤線協定”によって預言者直系のハーシム家を自在に動かしながら、チャーチル一家は地底に穴を掘り始めた。やがて、その閨閥に入る鉄道王ハリマンがテキサス州のブッシュ大統領家を育て上げ、大富豪ハワード・ヒューズやベーカー法律事務所を中心に、壮絶な油田争奪戦を展開した。P29
『世界石油戦争』 広瀬 隆
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