加藤のメモ的日記
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2014年06月20日(金) 頭取たちの決断 ��

ある拓銀OBは「21世紀ビジョン時に、不良債権処理を手がけていれば何でもなかった。不良債権の芽は出ていたが、まだ巨大な普段ではなかった」と振り返る。しかし、山内は泥をかぶるタイプではなかった」と振り返る。しかし、山内は泥をかぶるタイプではなかった。幹部にも、泥の中に手を突っ込んでまで山内を支える決意が賭けていた。経営陣が決断できないツケは、次第にその後の亀裂を深めていく。1992年の春に、カブトの業績悪化が表面化した。その時点で、拓銀グループによるカブトグループ全体向けの融資額は数千億円に達していた。拓銀は急遽、追加資金繰り支援に踏み切ったものの、カブト向け融資の回収が大きな課題として浮上した。海道は引責の形で退任した。山内はようやくSSKの呪縛から解き放たれる。海道が退任した直後、河谷は一夏をつぶしてカブト関連の融資を調べ、事態の深刻さに驚かされる不良債権の芽はすっかり開き、拓銀内部にジワリと根を張っていたのだった。

拓銀の特徴でもる東京と北海道の二重体制への対応も特徴的だった。市場にたたかれ、資金繰りが厳しくなった時、常務の鷲田は「本州の店舗は数カ店を残して撤退しかない。言うことをきかない東京本部の役員は、あなたが首を切れ」と河合に激しく進言したと話す。河合は「そうだな」とうなずいて東京に向かったが、結局、しょげて帰って来たという。「情の人」でもあった河谷。鷲田は拓銀破綻後、頭取代行として1年にわたって困難な残務整理を遂行した。鷲田は1996年に拓銀が280億円の優先株を発行したとき、札幌の本店長として、取引企業などに約50億円を引き受けてもらった経緯があった。配当を一回しただけで紙切れと化した優先株。頭取代行の鷲田は売りつけた相手先に土下座して回った。

お前のところからは頼まれなかった

心ならずとも、拓銀の幕引き役を引き受けざるを得なかった鷲田は今も、「生きるために、ありとあらゆることをやったかというと疑問が残る」とつぶやく。拓銀破綻後、北海道経済が未曽有の混乱に見舞われた。拓銀の大口融資先である老舗デパートの丸井今井や、ゼネコンの池崎工業などへの融資継続策をどうするか、受け皿となった北洋銀行、本州の店舗網を引き継いだ中央信託銀行などへの譲り受け債権の扱いなど、鷲田は政治家や総理官邸、大蔵省などに終始、頭を下げて回った。

ある時、大蔵省銀行局の幹部がこう漏らした「いや、まいったよ。拓銀にこんなに政治的影響力があるとは思わなかった」。融資維持のための財政支援などで渋る大蔵省を、政治家たちがどやしつけ、強引に財政資金を付けていったのである。大蔵幹部から拓銀の政治力を絶賛する感慨を聞かされた鷲田は、ある政治下にこう尋ねた。「ご支援、ありがとうございます。だけど、どう手拓銀のためには何もやってくれなかったんですか」。その時の答えが「お前のところからは、頼まれなかったんだ」

大蔵省などへの当局対策は拓銀の東京本部の担当だった。だが、、当時の大蔵省は接待汚職事件などで、激しいバッシングを浴びていた。自らの守りに回らざるを得ない大蔵省には、拓銀問題で政治家を心底動かすだけの余裕を欠いていた。ところが当時の拓銀幹部たちは、大蔵省を越えて、政治家に直接働きかけることに思い至らなかった。旧来のオカミの権威にすがるばかりで、危機への備えを充分に整えず、「何とかなるはず」という先行きへの根拠のない甘さが支配していた。

1996年9月、大蔵省は阪和銀行(和歌山)に銀行として初の業務停止命令を出して、受け皿金融機関に確保しないまま、同行をつぶした。再建見込みのない銀行は、市場から粛々と退出させるという論理を重視した決断だった。決断はよし。だが、その後、和歌山地域の経済全体に、長く大きな影響が及び、破綻した同行の従業員組合には預金保険の整理業務拒否もちらつかせられて、公的資金をつぎ込んでの割増退職金支払いを飲まされるなど、事務的な手抜かりを露呈してしまった。その結果、「地域経済に影響の大きい金融機関はつぶせない」というのが、阪和騒動から大蔵省が学んだ教訓とされていた。拓銀はそうした大蔵省の教訓を過大に評価していたのかもしれない。

「潰せないが、市場から潰されるものを、どうやって支えたらいいのか」あるいは当時の大蔵省は、拓銀が生き残りをかけた北海道銀行との合併を想定していたのかもしれない。「拓銀と道銀の合併もよし、拓銀が破綻すれば、道銀を受け皿にするもよし」と。鷲田は、道銀との合併交渉が始まった時、河合に進言した。「合併を成功させるためにも、北海道を挙げての応援団を作らないとダメだ」道内外の政治、同庁、道財界。オール北海道の体制を組み、政治の力に頼る。土下座をしてでも、脅しをしてでも迫るべきだと。だが、身内に対しても情を断ち切れない。「優しいエリート」の河合は、常にどこかで「待ち」の思いを吹っ切れず、政治力を動かすこともできずに終わることになる。



『頭取たちの決断』 藤井良弘


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