加藤のメモ的日記
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2014年06月13日(金) 三浦雄一郎

三浦雄一郎(80歳)エベレスト登頂は本当に快挙なのか 総費用1億5000万円 一方、ヒマラヤ遭難死の河野さんは200万円

三浦雄一郎氏が80歳でのエベレスト登頂に成功した同じ日、主婦登山家の河野千鶴子さん(66歳)はヒマラヤの高峰で66年の生涯を閉じた。二人の明暗を分けたのはなんだったのか。高齢者登山の危険性も指摘されるなか、三浦氏の登頂を手手放しで称賛するだけでいいのか。

「世界最高の気分。人生でこれ以上ない気分。80歳でもまだまだいける」8848メートルの登頂から衛星電話を通じて届けられた三浦雄一郎氏の元気な肉声―。80歳7カ月でのエベレスト登頂は世界記録を更新し、高齢者を勇気づけるニュースとして連日メディアを賑わした。安倍政権は三浦氏の功績を称え、元気な高齢者と表彰する「三浦賞」を創設する案も検討しているという。

このプロジェクトは、三浦一家のチャレンジでもあった。今回、三浦氏は次男の豪太氏(43)とともにアタックに成功。豪太氏は2008年、三浦氏が75歳の時に成功したエベレスト登頂にも同行したが、高所性脳浮腫を発症し、一人下山した経験を持つ。前回、叶えられなかった親子そろっての夢。その過程は、日本で待つ妻の明子氏、娘の恵美里氏が、現地の二人と衛星電話で交信する模様を通して、登頂前からお茶の間に伝えられた。

だが、この三浦フィーバーに違和感を覚える登山家は少なくないという。あるベテラン登山家はこう語る。「確かに三浦さんは凄いことをやった。しかし、これは三浦親子が山頂で掲げた秦にプリントされた企業からの莫大な資金援助があったからこそできたこと。スポンサーだけではありません。今回のプロジェクトは、登山関係の会社を営む三浦家にとっても大きな利益を生むビジネスです。そうした事情を考えると、このフィーバーにはどこかシラケたものを感じるのです。

エベレスト登頂に多くの支援が必要なことも理解できるが、どこか釈然としない違和感。それを詳述する前に、ある主婦登山家の悲劇に触れておきたい。河野千鶴子さん(享年66)。河野さんは、まさに三浦氏がエベレストの山頂に到達した5月23日の夜、ヒマラヤの世界7位の高峰・ダウラギリ(8167�叩謀伉困鯡椹悗稿使召个如�疲労で体が動かなくなり亡くなった。夫の昌治さんが語る。「妻は若いころから山が好きだったんですが、子育てもあったので『子離れしたら好きに登っていいよ』と、結婚当初に約束していたのです。そして、50歳で看護師として勤務していた病院を辞め、退職金などを元手に本格的に登山を始めました。尊敬する三浦さんを真似て、足に重りをつけて訓練してもいました」

河野さんの高峰への挑戦は今回が最後だったという。「じつはもうお金が尽きていたのです。今回の費用も入山料、2人雇ったシェルパ代など、約200万円ぐらいはかかったと思います。最後の挑戦だったから、せめて頂上に立たせてやりたかった…。本人も悔しかったと思います」(同前)

計27名の”大名登山”

確かに、公表された三浦市の遠征隊リストを見ると、錚々たる布陣だ。アタック隊が三浦親のの他日本人2名、アタック隊サポートメンバーが日本人2名、ベースキャンプサポートメンバーがドクターなど日本人3名、さらにシェルパが18名で、計27名の大部隊だ。無酸素登山家の専門家である小西氏が解説する。

「今回の仕事を請け負ったアタック隊のガイド役、カメラマン役の日本人2人は実績のあるクライマーです。シェルパたちも、全員のエベレスト登頂回数を足せば数十回を超えています。まさに最強のサポート軍団といえるでしょう。今回、報道では登頂者として三浦さん親子の名前が出ていますが、アタック隊の二人の登頂していると思われます。また、登頂者にはシェルパの名前が出ていませんが、通常ならは数名のシェルパも頂上まで同行していると思います。他に、ベースキャンプまでの荷揚げのために、ポーター数百名が雇われるものです」シェルパたちの主な仕事は、1本4キロほどある酸素ボンベや装備品、食料、燃料などの運搬、アイスフォールと呼ばれる傾斜のある氷河にはしごをかけて道を作ることだという。

まさに人海戦術で三浦氏を頂上に立たせるプロジェクトだったことがわかる。「もちろん、80歳で登頂された三浦さんの生命力は超人的であり、偉業といえます。ただ、強力な助っ人であるシェルパたちの協力があったからこそ、三浦さんは登頂をなしえたのです。生まれたときから富士山より高いところに住んでいる彼らと私たちとでは、体の構造が全く違うのです」(同前)

小西氏は、河野さんの遭難についてもこう指摘する。「河野さんは疲労凍死だったと報じられています。もしそうならば、シェルパを7,8人雇い、酸素ボンベをたくさん持って行くことで遭難をまむがれた可能性はあります」では、三浦氏の登山費用はいくらだったのか。三浦氏の娘の恵美里氏はこう説明する。「概算で約1億5000万円です。うち約1億円がスポンサー、約1800万円がサポーターの方々からの支援金です。残りの約3000万円は、三浦氏が講演料などで得た収入でまかないました。内訳は、今回のエベレスト登頂に要した費用が約3000万円です。エベレストの入山料700万円の他、酸素ボンベが500〜600万円、そして現地のシェルパの報酬、スタッフの保険料、航空券代などを合わせた額です。

日本人メンバー9名の人件費については個人情報に関わることなので明かせません。映像を収める費用、通信費は別途約3000万円かかりました。残りの費用は、今回の挑戦までに必要だった3年間の準備に費やしました。準備登山として、ヒマラヤの6000メートル級のの山に2度登った費用、国内でのトレーニング費用などです。なお、山頂にはシェルパ10名が同行しました」恵美里氏によると前回、前々回のエベレスト挑戦にはそれぞれ約計6億5000万円もの大金がかけられていたのである。今回の登頂については、登頂成功といえるのか、という議論も登山家の間では起きている。三浦氏は登頂後、6500メートル地点までは徒歩で降りたが、そこでアイスフォールが崩壊の危機にあった。疲労が限界に達していた三浦氏がアイスフォールの修復を待って徒歩で降りるのは危険という判断で、急遽、ヘリコプターでバースキャンプまで降りたのだ。

この件では、登山家の野口健氏の発言が注目を集めた。野口氏はかって、テレビタレントがマッターホルンに登頂後、ヘリで下山した際に「自力で下山するまでが山登り」であり、登頂とはいえないと批判した。しかし、今回のケースについては、「緊急避難的にヘリを利用した」という理由で登頂は認められるという見解を示したのだ。野口氏に「今回のケースが野口氏自身であっても同様の見解なのか」と問うと、こう答えた。「私と三浦さんとでは年齢が違いますので、登頂とはいえないでしょう。登頂の定義というのははっきりしていないのです。80歳という年齢で山頂まで自力で登った並外れた体力、気力を考えれば登頂と認めてあげるべきだと思います」

三浦氏サイドに聞くと「私が書いたブログを読んでほしい」(笑美里氏)とのことだった。笑美里氏はこう書いている。「全員無事で生きて帰ること、それが隊長たる自分が守り抜くべき道。父はここからヘリコプターで下山することを決めた。登山とは出発点から山頂へ登り、出発点まで自力で帰ることを登山の定義とし、批判されることは、正直私にとってどうでもいいことだ」恵美里氏によると。三浦氏がチャーターしたヘリコプターに要した費用は約200万円。皮肉にも、河野さんの登山費用と同額だった。

三浦氏の登頂が高齢者に勇気を与えたことは間違いない。だが、「三浦賞」の創設など手放しの称賛だけでは、高齢者の無謀な登山を煽りかねないのではないか。


『週刊文春』2013.6.13


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