加藤のメモ的日記
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2014年05月12日(月) 患者よ、がんと闘うな ��

「副作用がない」は嘘

非証明医療のどこが問題なのか、患者本人が納得して受けているのだから、勝手にさせておけばいいじゃないかと、考える読者もいることでしょう。しかし、放っておけない理由があります。患者に危険と不利益が及ぶからです。危険というのは、副作用によって命を縮める可能性です。皆さんの中には、非証明医療の多くは副作用がないか少ない、と思い込んでいる方もいるようですが、それは事実に反します。ある患者は私に内緒で、薬木を原料にしたものを煎じて飲んでいましたが、突然全身の皮膚がズルリとむけてしまいました。口の中の粘膜まで脱落し、ひどい口内腫瘍ができたため水も飲めず、苦悶のうちに亡くなりました。それまで普通に暮らしていた者が、ある日突然変調をきたして亡くなることは、抗がん剤でもなかなか見られない現象で、私自身も恐怖を感じました。

ほかには、断食に走って急に痩せて体力を消耗し、アッという間に死亡した方もいます。いずれも前記大事典に紹介されている方法です。要するに非証明医療の中には、体に何らかの作用をするものがあるわけです。しかし、作用があるから恐ろしいのです。手術や抗がん剤と同じように、体に作用するもので、副作用がないものは存在しません。それゆえ、副作用がなくて目指す作用があるというものは、インチキと思って間違いありません。それなのに非証明医療は副作用なないか少ないという神話ができあがったことについては、およそ二つの原因が考えられます。

一つは、関係者が副作用の存在を隠しているか、調査もしていない可能性です。その好例が漢方薬で、調査をしてみると死亡を含む重篤な副作用があることがわかってきました。(『漢方薬は効かない、見逃せないこれだけの副作用』ワニの本、KKベストセラーズ)。二つ目の原因としては、ありふれた病気や症状のかたちをとって生じる副作用の場合、単純な調査では副作用とわからないことがあります。たとえば、カロチンに関しては、高名な医学統計専門家である平山雄・予防がん学会研究所所長が、その著書、『老化・がんを予防するカロチンの秘密』(ゴマブックス、1990年刊行)のなかで、「カロチンは、摂り過ぎても危険な過剰症を起こさない」と言い切っていました。しかし、前述のように、フィンランドでくじ引き試験をしてみると、発がんが増加し総死亡数が増えるという副作用の存在が判明したわけで、単純な調査や思い込みの怖さを示してあまりあります。 

そのうえ、がんにかかったあと非証明医療を受けている場合には、どういう原因で死のうと、もともとのがんが進行・再発して死んだことにされてしまうのがおちでしょう。それが、これまで非証明医療の副作用による死亡が問題にされてこなかった最大の理由かもしれません。別の危険は、みすみす治るチャンスを見送ってしまうことです。非証明医療はあまりに宣伝されるので、がんが発見されたばかりの患者も飛びつきがちですが、それは危険です。自然の治癒力を大事にする方法に賭けてみる、といって、その結果手遅れになってしまった患者は、私が見ただけで十指に余ります。前述の断食療法で命を縮めた方も、悪性リンパ腫という治る可能性の高いがんでした。

患者に及ぶ不利益というのは、経済的な負担です。非証明医療は大抵、結構長くのお金をとります。たとえばプロポリスは言われるままに飲むと月に23万円かかります。先の大事典に出ているある医師のもとでは、検査だけで20万円を請求するといいますが、それは医療保険のもとでなら数千円の自己負担ですむ検査です。私が聞いた最高金額は、ある国立大学教授が大宣伝している療法で、1回のコースで2.000万円を請求するというから驚きました。それらはいずれも、延命効果さえ証明されていない方法ですから、詐欺と呼ぶしかないのではないでしょうか。

非証明医療がこれほどの問題を作りだしている責任はあげて、それに関与している医師たちにあります。患者が家族にどのような思い込みがあろうとも、医師たちが肯定的態度を示さなければ、素人は海のものとも山のものとも分からない方法にそうやすやすとは手を出さないものだからです。非証明医療に携わる医師たちには、科学ないし論理を無視するという、特徴があります。たとえば帯津氏は、「医療の基本は�ヾ擬圓気鵑�その治療法を信じること、��医師がその治療法を信じること、そして�4擬圓気鵑醗綮佞箸�互いに信じ合うことです。この3つの条件さえそろえば多少非論理的な治療法でも思わぬ効果を発揮します」(『がんを治す大事典』)と語ります。しかし、そもそも非論理的な要素を抱えた方法をどうすれば信じることができるのか、その説明がありません。

もっとも帯津氏は、野菜スープでがんが治ると宣伝・診療して医師法違反と薬事法違反で有罪判決を受けた立石氏に関連して、「そんなにがんは簡単に治せるものではない。私は『治る』という言葉は使いません。治ると断言してしまう民間医療は要注意でしょう」とコメントしています。すると、『がんを治す大事典』を編集・著述した時点とは、心を入れかえているのかもしれません。

マスコミにも問題があります。今年の初め、「あるがん治療への挑戦 漢方薬と免疫療法」という番組がNHKテレビで放映されました。登場した陳瑞東・癌研究会付属病院婦人科医長は、がんと漢方薬と免疫との関係について、こう述べていました。「がんを治すというところは、おそらく免疫が関係していると思う。だから免疫がうまく効けば、これは自分の細胞ががん細胞を殺すわけですから、がんがなくなるはず。ところがその細胞っていうのは、やっぱり働きやすい条件がなければ働かないだろうと思うわけです。漢方薬はそういった条件づくりまでしてくれるだろう」この短いセンテンスの中に、仮定や推測を表す「思う」「だろう」などが実に6回も登場しています。つまり、何ら実証するデータがないために、仮定の上に推測を積み重ね、願望と期待だけで包み込んだ発言になっているわけで、科学や医学とは無縁のしろものでしょう。



『患者よ、がんと闘うな』 近藤 誠


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