加藤のメモ的日記
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貧しくもなく、また富もせず、ただなくてはならぬ食べ物で私を養ってください
アジアやアフリカの多くの文化に共通する民話には、金持ちになろうという知恵に疑問をさしはさむものがある。例えば、こうである。
漁師が木陰で昼寝しているところに旅人が通りかかった。旅人は眠っている男を起こし、なぜ魚を捕まえないのかと尋ねた。「家族の夕食に、もう2匹捕まえよ」。「もっと大きい網で、もっと長い時間漁をすれば、10匹は捕まえられるのに」と見知らぬ男は言った。漁師は「でも、2匹しかいらないのに、10匹も捕まえてどうするんだ」
「売ればいいだろう。毎日同じようにすれば、舟を買うお金が貯まるよ」「それで、どうするんだ」。「もっとたくさん、魚を捕まえるのさ。人を雇って、もっと魚を捕らせることもできる。金持ちになれるよ」「金を持って、どうするんだ」「楽しい毎日が過ごせるさ。くつろいで、楽しく木陰で寝ることができるだろう」。「今、やってるみたいに?」と漁師は聞いた。
貧困について学ぶ必要があるのは誰か。地球上のほとんどの人間は、貧困になじみがある。多くの人たちは、再び貧乏に捕まるのではないかと恐れているし、他の人たちは貧困からできるだけ遠くへ逃げてきた。様々な統計が出されている。援助団体、国際機関、人道組織が啓蒙活動をしている。これらの事実がなぜ、世界で拡大しつつある不公平にほとんど影響を与えないでいるのか。というのが本書の中心問題である。
不平等
貧困を考察するには、他の方法もある。その一つは、国家間および国内の不平等の状態、例えば、生きるためになくてはならない必需品の欠如を示すのに対し、不平等は社会的不公平の指標である。不平等が増大する一方で、貧困は減少しているかもしれない。
どのような方法で考察するにせよ、社会的不公正が増大し続ける限り、極貧は存続する。このことは、貧困をめぐる議論に強い影響を与える。というのは、グローバリゼーションが体現している改善のモデルは「金持ちが今よりはるかに金持ちになったときのみ、貧乏人は少しだけ貧乏でなくなる「というものだからである。
寸描
極貧状態で生活している人間の数はよく知られている。だが、数字は物語っているのと同じだけ多くのことを隠蔽しているのである。
●世界で8億4000万人以上が栄養不良の状態にある。 ●毎年、600万人にのぼる5歳未満の幼児が栄養失調で死んでいる。 ●世界で12億人の人々が、1日1ドル未満で生活している。 ●世界でもっとも豊かな1%の人たちの収入は、最貧57%の収入に等しい。 ●発展途上国では、1000人中、91人の子供が5歳未満で死んでいる。 ●年に、1200万人が水不足のせいで死んでいる。11億人が浄水を手に入れることができず、24億人が適切な衛生設備なしで暮らしている。 ●4000万人がエイズに罹患している。 ●発展途上国の、1億1300万人以上も子供が基礎教育を受けていない。そのうち60%は女性である。 ●女性は、世界の労働時間の3分の2を働き、世界の食糧の半分を生産しているにもかかわらず、世界の所得の10%しか稼いでいないし、世界の資産の1%未満を所有しているにすぎない。
発展途上国全体の人口の5分の1近くがm40歳を越えるまで生きられない。シェラレオネは世界でもっとも平均寿命が低く、おそらく38歳である。これは日本の80歳の半分以下である。最貧国で生まれた子供の20%が5歳未満で死亡しているのに対し、最富裕国では、5歳未満で死ぬ子供は1%に満たない。
先進工業国で寿命が延びているのは、公衆衛生、環境衛生のめざましい改善、とりわけ衛生設備と水質の改善の結果である。このことは、生活水準の向上、栄養と住宅環境の改善と相まって、豊かな世界に病気の新たなパターンを生み出した。伝染病や飲料水媒介の病気から心臓病やガンなどの慢性疾患へと変わってきたのである。南の国々の特権階級の間にも、同様の変化の兆候が見られる。だが、最貧の人たちは今でも、19世紀初頭のイギリスで一般的だったような種類の病気の犠牲になっている。
南の世界では、、寿命の延びと幼児死亡率の低下はわずかである。衛生設備の改善はまだ不十分である。世界で28億人が十分なゴミ処理システムなしに暮らしているが、数字が多少良くなったのは、安価な薬が入手できるようになったこと。とりわけ抗生物質と経口補水塩療法のおかげである。欧米の「発展」への道筋が世界中で繰り返されるのが当然と考えるべきではないだろう。インド、中国、ブラジルあるいはインドネシアの政府にとって、豊かな世界の保健インフラを作り出した莫大な公共支出の実施は、近い将来には不可能と思われる。
貧困から這い上がる
欧米流の富の想像のパターンを採用すれば、世界中のほとんどの国が欧米と同じように豊かになれると、長いこと思われてきた。しかし、最近では、とりわけ地球規模で富が増大していることを考えた場合、なぜいくつかの国や地域は絶対的貧困の状態に置かれた人間の数を減らすことができないのか、という問題が想起されるようになった。
『世界の貧困』 ジェレミー・シーブルック
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