加藤のメモ的日記
DiaryINDEX|past|will


2013年02月06日(水) 憲法改正は必要か

「憲法改正は是か非か」という問いは無責任である。現憲法と比較する改正案を示され、その背骨となる思想を検討して初めて国民は是か非かを判断できる。現在、与野党で具体的な『日本国憲法改正法案』をまとめているのは自民党だけであり、国会の憲法論議はその案を軸に行なわれる可能性が高い。そこで、自民党案をもとに、何が改正の論点なのかを見ていきたい。

「国防軍創設」(9条改正)に憲法改正は本当に必要か

憲法改正を議論する場合、「改正しなくてもできること」と「改正しなければできないこと」を峻別して議論しなければ国民がミスリードされる危険が生じる。とくに9条の改正をめぐってはその2つがごちゃ混ぜに議論されている傾向が強い。現憲法は9条で「戦争の放棄」を謳い、9条の➁で〈前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない〉と定めている。

自民党の憲法改正草案では、この9条改正が重要な柱となっており、�△鬚修辰�り削除した上で、「自衛権の発動を妨げるものではない」と明記し、新たに次の条文を新設している。〈我が国の平和と独立並びに国民及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する〉続く条文で国防軍の任務などを定め、さらに9条の3では、〈国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない〉と領土保全条項を盛り込んだ。

この9条改正以外にも、自民党案は、武力攻撃を受けた場合や大規模災害などの際に、内閣が国会の可決なしで「法律と同じ効力を持つ政令」を制定できる緊急事態条項(新98条など)を新設するなど、国家安全保障体制を大幅に強化する内容となっている。「憲法改正」といえば、この9条改正と国防軍創設がセットで議論されるのが常である。しかし、その前に、自民党案が提起する国防軍創設が本当に憲法を改正しない限り実現できないのかを考える必要がある。

9条改正必要論者として知られる憲法学者の小林節・慶応大学法学部教授はこう指摘する。「自衛隊を国防軍に改称するだけなら憲法改正の必要はありません。9条�△任蓮慘Τざ�軍その他の戦力は、これを保持しない』と定められていますが、法律は軍という名前がついているかどうかではなく、実態で判断するもの。日本は主権国家として自衛権があり、自衛隊はその自衛権に基づく存在です。今の自衛隊が合憲であるのだから、名前を国防軍にしても合憲。したがって国防軍への名称変更は憲法改正しなくても可能なのです」

政権を持つ自民党が国防軍を創設するというなら、現憲法のもとでも、自衛隊法を改正して名前を「国防軍」にすることはできる。そのうえで、憲法改正しなければできない国防軍の活動があるとすれば他国への侵略戦争だが、それは自民党の憲法改正案でも禁じている。ならば、9条改正の目的は何なのか。そうした問題は国防軍創設だけではない。政府は集団的自衛権について、「我が国は、国際法上、集団的自衛権を有しているが、行使は憲法上許されないと考えてきている」という見解を取ってきた。自民党案で自衛権を改めて明記したのは、米国との集団的自衛権の行使に道を開くためだと見られている。

しかし、小林教授は、「今の日本は、竹島は韓国に実効支配され、北方4島はロシアに実効支配され、尖閣は中国の脅威にさらされている。急迫不正の侵害があった場合、これを排除するために安全保障条約を結んでいる米国との集団的自衛権が必要になる。集団的自衛権は有しているのだから、その行使に憲法改正の必要はない。『憲法9条のもとで認められる自衛のための必要最小限の範囲内で集団的自衛権による武力行使はできる』と閣議決定で政府見解を変更すれば可能です」と語る。

前述の「領土保全条項」にしても、条項の追加がなければ尖閣諸島など周辺の脅威にされされている領土を守れないというものではないことは明らかだ。そうした、憲法改正しなくてもできる必要な安全保障体制の強化をまず実現すべきではないか。それをやった上でなければ「改憲しないと日本を守れない」と国民を騙す改憲論になる危険がある。



『週刊ポスト』1.25


加藤  |MAIL