加藤のメモ的日記
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2012年10月08日(月) がんワクチン ��

末期がんにも効果

神奈川に住む井上洋子さん(仮名)は、33歳で長女を出産した。産後の経過が悪く、腰の激痛に耐えかねて出産3カ月後に病院に行くと、腹部に14センチもの腫瘍が見つかった。15時間もかかる大手術ですべて切除できたが、「巨細胞がん」という特殊なタイプの進行すい臓がんだった。術後わずか3カ月で肝臓に再発。手術の傷もまだ癒えない状態で組まれた抗がん剤治療は、副作用が強く2回で中止に。抗がん剤は全く効かず、肝臓のがんは2倍近く大きくなっていた。

「肺がんで他界した父が抗がん剤で弱っていく姿を見ていたので、効果がないならやめたいと思っていました」井上さんはその後、死を覚悟し、母親とホスピスの申し込みにもいった。そんな中、夫がインターネットで偶然見つけたのが、ガンペプチドワクチン療法を説明する東大医科学研究所のサイトだった。電話で問い合わせると、研究グループである千葉徳州会病院肝胆内科の浅原新吾医師を紹介された。「夫の気持ちはありがたかったけど、正直、がんワクチンの効果はあまり期待していませんでした。でも、私が何か治療している方が家族はきっと精神的に落ち着く。そう思って、受けられるのならやろうと考えていたです」と井上さんは振り返る。

週に一度足の付け根(そけいぶ)にペプチドワクチンの注射を打ち始めて1ヵ月後、それまで抗がん剤がまったく効かずに増大を続けていた肝臓のがんは進行が止まった。その後、半年経つ頃から徐々に小さくなりはじめ、1年後に残っていたのはごくわずか。本人の希望によりワクチンの投与はここでやめたが、その後もがんは縮小を続け、がんの発見から3年経った現在、画像上はは完全に消失した完全寛解という状態にある。「がんワクチン」という言葉を耳にしたころがあるだろうか。2月6日にNHKの『あさイチ』で紹介されたことで注目が集まり、臨床試験を実施している多くの医療機関に問い合わせが殺到したがんの治療法である。

そもそもがんワクチンとは、がん細胞の表面にある特殊な物質(がん抗原)を目がけて攻撃し、がん細胞だけを叩くという免疫療法の一種である。子宮頸がんなどの病気を予防するワクチンもあるが、これはがんを治療するものである。がん抗原は多くの種類があり、どれをどのように攻撃するかによってワクチンの種類も異なってくる。ガンペプチドワクチンや樹状細胞ワクチンががんワクチンの代表的なものだ。

抗がん剤や放射線治療のような副作用がほとんどないのが大きなメリットととして挙げられる。いずれも創薬にいたる前の試験段階のもであり、治療効果が科学的に認められているわけではないのだが、新たながん治療として期待が寄せられている。井上さんのガンペプチドワクチン療法を担当した浅原医師は「彼女はすい臓がんの中でも悪性度の高い『退形成がん』の巨細胞がんという症例も少ないがんで、通常は治療は手術しても平均余命は10カ月程度といわれています。術後間もない再発だったことも考えると、想像をはるかに超える治療効果でした」と分析する。現在も3ヶ月ごとに採血とCT検査でで経過を見ているが、「異常なし」が続いている。

「ワクチン治療中から食事療法による体質改善と、前向きな人が多くて情報交換もできる患者の集まりに2ヶ月おきに参加して、気持ちを落とさない生活を心がけていました。それは、今も再発予防のために続けています」そう話す井上さんは、夫、親、そして3歳になる娘との時間を大切に、日々を過ごしている。

肺がんにも効果が

浅原医師が井上さんに投与したのは、東大医科学研究所が中心となって開発されたすい臓がんのペプチドワクチン。このほかにも、全国の大学病院単位でさまざまながん抗原を使ったペプチドワクチンの研究が行なわれており、例えば久留米大学病院は、国内で唯一、がんワクチンの専門外来を持つ。それでも、患者の血液を調べて効果が高いと思われるがん抗原の上位4種に適合するワクチンを、その人専用の治療薬として打っていくテーラーメードの手法を取っている。九州大学病院にもがんワクチン療法を行なっている。

滋賀医科大学医学部付属病院呼吸器外科の寺本医師が行なっているのが、‘05年に先端医療として認可を受けた樹状細胞ワクチン療法である。これもがんワクチンの一つだ。採血して抽出した患者の樹状細胞を、肺がん細胞の目印として存在するがん抗原「マックワン」と一緒に培養する。これを患者の体内に戻すと、がんを攻撃するキラーT細胞というリンパ球が「マックスワンを標的に攻撃せよ」と樹状細胞から指令を受け、がん細胞だけに攻撃を始めるのだ。

長野から通院している田中和人さん(64歳・仮名)は、抗がん剤が効きにくい扁平上皮がんで手術で右肺を全摘した。術後に再発をしたとき、主治医から「抗がん剤は間質性肺炎を起こす危険が高いので勧められない。治療法はもうない」と説明された。「でもまだ元気だし、私は最後までがんに立ち向かっていたかった。そんな時、市民公開講座で寺本医師の講演を聞いた。適応を調べ、がんワクチン療法をやってみますかと言ってもらった時はうれしかった」と話す。

ワクチン療法を開始してからも。再発を繰り返し、がんは消えてくれなかったが、会社の仕事を続け、片肺でも好きなゴルフをしながら4年間、普通に暮らすことができた。寺本医師はもう治療法がないといわれた肺がん患者43人に。樹状細胞ワクチン療法(2週間に1回の投与で3ヶ月)を実施したところ、評価可能だった人は26人。そのうち腫瘍が縮小または不変だった人が15人(うち、30%以上縮小した人が1人)腫瘍が大きくなった人が10人だった。寺本医師は「他に打つ手がない肺がんは非常に厳しく、現状維持が精いっぱいなのですが、評価可能だった患者の6割に病勢コントロールがついた意義はかなり大きいと考えています」


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