加藤のメモ的日記
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2009年12月08日(火) 日本が抱える根本的矛盾

日本は、一方では世界の経済大国であるのに、他方軍事問題に関しては小国の指導者にもはるかに劣る。水準の低い軍事知識、軍事的な判断能力しか持たないだけでなく、一国の主権を守るためにこそ自国の防衛力、軍事力があるという国際的な常識すら、判断の基準に欠けていると評価されている。

となれば、日本はいつまでたっても米国の「軍事力の傘」の下で庇護してもらわないと国際社会の中で生き残れない弱小国の地位から脱出できないことになる。戦争は人類の長い歴史と固く結びついている。と同時に、軍事力は一国の主権を外敵による侵害から守り抜くために、絶対に必要欠くことのできない基本的な手段である。

こういう発想は、戦後の平和憲法第9条の規定した「非軍事化」の構想と全く対立するものではない。自国の主権を外的からの侵害に対して外敵から守り抜くことは、それこそいかなる国家にも求められる基本的な手段なのである。こうした国際的な常識を尊重した発想は、これから一段と急速に進む国際化の中で、次々に日本を離れて外国で生活しなければならないに日本国民にとって、最も重要な国際常識を身に付けるために、どうしても必要なものである。

この常識に欠けたまま日本を遠く離れた外国で生活しなければならなくなった時には、それこそ理解に苦しむような生活環境の変化もさることながら、周囲の外国人たちとの発想のずれに悩まされるに違いない。

例えば、世界のほとんどの国においては、一定の年齢に達した青年は、男はもちろん女性でさえ徴兵されて軍務に服さなければならない。外国で生活している日本国民にはこういう制度そのものが理解を超えるものになった。外国に居住する日本国民の周囲でこうした徴兵の経験に直面する若者が、次々に生じてきた時には、彼らに対してどういう対応が必要なのか、それが適切でない時には、極めて厳しい摩擦が生ずる危険があるのは当然であろう。

特に若い世代の日本国民は、日本が戦後徴兵制を廃止した恩恵をどれほどのものと受け止めているのか。世界の大多数の国においては、一定の年齢に達した青年は徴兵の対象として厳しい国家の監督を受けなければならない。そこに生ずる意識の落差は驚くほど大きいものがある。日本国が日本国民に提供している、世界全体の中でも極めて例外的な恩恵である。

ソ連が事実上の全面降伏をして以来、アメリカの政治には新たな困難が起こっていた。最大の仮想敵国ソ連の脅威が消滅した以上、これまでのようにアメリカ人が世界の警察官として率先して血を流す必要があるのかという、深刻な疑問だ。これに答えることなしに大統領は、アメリカ青年の血を要求できない。その際いつも問題になるのが「平和国家、不戦国家」の日本だ。

日本は、憲法9条で戦争行為を否定しているために海外派兵はできない。にもかかわらず世界の大国であり、しかも経済ではとび抜けた「超大国」であるにもかかわらず、世界秩序を回復するための国際的な治安維持活動に参加できない。逆に言うと自国の青年の血を流すという犠牲を免れている。

自由な経済活動の大前提は、安定した国際秩序の維持なのだが、イラクの侵略行為でクウェートという一つの国が丸ごと占領され合併された。しかもその国は、世界の石油市場を左右する大産油国であり、日本はそこに強く依存する石油の大輸入国であり、大消費国である。

アメリカ・イギリス・フランスなどの先進国は、すぐに多国籍軍を派遣して、イラクと開戦し、武力で秩序の回復に乗り出したが、最も恩恵を受けているはずの日本は参加しない。参加できないという。理由の如何に関わらず、これは現在の国際秩序の根本的な矛盾と言っていい。単にアメリカ国民が不満に思うだけでなく、先進国の国際協調そのものを危うくしかねない大きな不安定要因だ。

さらに最も大きな矛盾は、こういう制度そのものをつくったのは日本自身ではないということだ。第二次世界大戦に敗れた日本が、自分で選択した制度ではない。日本を軍事占領したアメリカがつくったのだ。軍事力を背景に、日本の完全な非武装化を占領政策の最優先事項として強制した。日本はそれに従ったにすぎない。

おかげで日本は、第二次大戦に続いて起こった、国民党と共産党の内戦、いわゆる「国共内戦」にも、米ソの「代理戦争」である朝鮮戦争にもベトナム戦争にも、最小限の影響しか受けなくてすんだ。それどころか戦後、アメリカをはじめ西側先進国が一致して自由な国際貿易に基づく新しい世界秩序を目指したために、その恩恵を100%享受して、戦後をはるかにしのぐ経済大国に変わることができた。

これはすべてアメリカの対日政策に発している。日本が自発的に志向したことではない。日本もその中で大きな努力をしたことは確かだが、大きな方向を決めたのはアメリカである。アメリカが日本に「強制」した。当時の日本に、ほかの選択肢はなかった。


『軍事頭脳を持っているか』


加藤  |MAIL