加藤のメモ的日記
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2008年12月30日(火) 米国発世界恐慌第二幕

ブラックマンデー以上の大暴落と、史上最大の上げ幅を短期的に繰り返すニューヨーク株式市場の乱高下そのものが、アメリカ金融帝国の崩壊を象徴している。すでに、危機の震源地・米国では、金融パニックという“ウォール街の問題から、実体経済へのダメージ”へと、問題の火が燃え上がっている。

FRB(米連邦準備制度理事会)関係者が明かす。「全米12地区の9月の景気情勢報告を見ると、すべての地区で、銀行から企業への融資が減少した。しかもある地域では、ほとんどの業種で新規借り入れができなくなるなど、企業の資金繰りが行き詰り始めている。銀行は個人に対しても金を貸さなくなっていて、個人消費も目に見えて鈍ってきている。

実際、米家電量販最大手のベスト・バイは、年末商戦でも客が激減することを見込んで、アルバイトの数を昨年比1万人も減らすことにしたという。婦人服大手のチコズFASでは、9月の売上高が前年比16%減。GM,フォードは、9月の売り上げが軒並み前年比2割ダウンとなった。

両者は、資金繰りが危ぶまれ、株価が急落。合併も見送られたため、米国政府は“最後の手段”として両者への公的資金導入の検討まで始めている。周知のとおり、米国政府はサブプライムローンの震源地となった住宅金融専門会社2社を事実上国有化するための21兆円をはじめ、資金不足に陥りそうな金融機関に注入する25兆円まで総額140兆円以上の支出を決めている。

そればかりか前述、フォードやGMなどの金融機関以外の大企業も、税金で救わざるを得なくなっている。それら巨額資金は結局、新たに発行する米国債に頼るほかない。しかしその先には、“世界恐慌の第二幕”が待っている。

「ドルが紙屑になる危険がある」―というのは、埼玉大学の相沢幸悦教授(国際金融論)だ。「これまで米国はバブルをつくって世界の投機資金を呼び込み
財政と貿易と家計の赤字を支えてきた。それで収入が低い国民まで住宅ローンを組み、不動産価格が上がれば、車も家具も買えた。一方で巨額の国債を発行して各国に買わせ、イラク戦費など財政赤字を支えた。

それは基軸通貨のドルを世界が必要としていたから成り立ったのです。しかし金融危機でバブルが弾けて、投資資金はドルに向かわなくなり、米国債も買われなくなった。そうした中で、各社の危機救済のために米国債がさらに発行されようとしている。

しかしこれまでに発行された膨大な額を含め、米国債は本当に償還されるものなのか。ドルの価値が怪しくなってきているのです日本政府が外貨準備として保有する米国債は約55兆円に上り、日本の年間予算のおよそ7割に匹敵する。それが紙屑になりかねないのである。

金融危機のあおりで地方銀行が貸し渋りと貸しはがしに走り、資金繰りができず倒産する企業が増えている。年末にかけてもっと深刻になる。そしてその先に迫る「ドル暴落」「CDS6000兆円爆弾」の足音―。

それにもかかわらず、「日本政府には危機感がなさ過ぎる」と前出の渡辺金融相が厳しい言い方をする。「アジア諸国は深刻な通貨危機に見舞われている。だから、世界恐慌を起こさないために円資金をアジア諸国に流してドル、ユーロと並ぶ基軸通貨にし、為替リスクの分散を図るという戦略もありえる」しかし政府にはそうした広い視野にたった議論もなければ、預金の全額保護や銀行間取引の保障など緊急にやるべき非常時対応を決定するスピード感にも欠けている。

前出・FRB関係者はこう嘆息した。「破綻したリーマンのCEOは年収80億円もの高級を得ながら経営責任は問われていない。さらに資本注入を受けるゴールドマン・サックスのCEOも引き続き巨額報酬を手にするといわれている。あれだけ批判されたのに、ウォール街を牛耳ってきた投資銀行の幹部に反省の色はないんだ。しかし、それより不幸なのは合衆国や日本の政治家・金融当局に、危機を解決できる人がいないということだろう」



『週刊ポスト』 10.31


加藤  |MAIL