子の年齢:3歳1ヶ月
野村万作・萬斎の「靱猿」の公演がオーバードホールであったので、見に行った。 ちーちゃんを実家に預けて一人で。
狂言を見に行こうと人を誘っても、あまり返事が芳しくないので、誘う気もないのだが、こうやってどこへでも一人で行くから友達が減るのかも、と反省。 さて、他の観客といえば、会場が会場なので、着物の人が多い。 着物って、ただ着ればいいってものではないな〜と思う。着物は目立つので、着こなしの優劣もハッキリ出るのだ。 黒紋付の羽織を着てきた人や、ハデな柄の半襟をした人、銘仙の着物に銘仙の羽織でごちゃごちゃした人などは、失礼ながら目障りな感じさえする。 その中で、すっと姿勢のよい若い人が、黒地の江戸小紋に白の半襟をきっちり詰めて着ていたのがとても美しかった。両親に連れられて来ていて、育ちの良い自慢のお嬢さんを見せていただいた、という雰囲気だった。
さて、公演が始まって、近頃は最初にレクチャートークがあるのがならわしのようで、萬斎さんが出てきて話す。開口一番にこう言った。 「富山には能楽堂があるのはご存知ですか?」 大半の客が大きく頷く。 「何故そこで演らないか?何回も演らなくちゃならないからです。」 実にうまい導入だと思う。観客全員が感じている疑問について一番最初に説明する。ステージと観客が一体になる瞬間だ。 狂言役者だけに、話の間合いが絶妙だと思う。間合いが長すぎて我慢できなくなるギリギリのラインで次の言葉が出てくる。 勿論間合いだけでもなくて、話のラインとしても、「能楽堂で観るのもいいですよ」とか「違う役者で同じ曲を観るのもいいですよ」なんてことをちゃんと言っていて、非常に素晴らしい。このトークだけでも喝采ものだったと思う。
演目は2番あって、前座に「文荷(ふみにない)」「靱猿(うつぼざる)」 「文荷」も万之介(万作さんの弟)さんが出ていてなかなか面白いので、「靱猿」の最初に、野村祐基くん扮する猿が出てきたときはちょっと白けてしまう。 というのは猿の演技は後半の舞のところ以外はアドリブなのだが、猿をやるにはチト大きくなりすぎた祐基くんは、やたらと体を掻いたりでんぐりがえしをする、猿らしくないばかりかせわしない。 これが3歳の初舞台なら、可愛らしくてウケるところなのだろうが、そろそろ小学校の祐基くんではマが持たない。
猿の命を助ける、と決まって興が乗ってきた大名が、猿と一緒に踊る、というところで、万作さんの独壇場となる。 猿の踊りの可愛らしさに、扇子やら素襖やらを次々と賜って、最後には問題の靱を持って踊り出す、という話なのだが、あの稚気あふれる踊りは誰にも真似できまい、と思わされた。そしてその様子が「初孫の可愛さに有頂天になるじーさん」だと見れば、役者の家族関係そのものでもあって、余計おかしい。 最終的には、まだまだ現役のじーさんが、舞台を大団円に持っていく、というところが親子孫三代で演る本当の意味でもあって、よくできた曲だと思う。
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