初日 最新 目次 MAIL HOME


読書・映画・旅ノート(毎日更新目指す)
くま
MAIL
HOME

My追加

2005年08月19日(金)
『光源』 桐野夏生

『光源』文芸春秋社 桐野夏生
ひとつの映画製作にかかわる人々の、欲望の交わる顛末記である。私自身は映画製作にはまだ『夢』を持っているほうなので、このような物語は、心理の駆け引きやら打算やらを垣間見ることが出来て大変興味深いと思うと同時に、ちょっとやりすぎではないのというところもあった。

もちろん無理も無いと思わせる設定にはなっている。この映画のねらいは単館上映、芸術肌の作品である。監督はなんと新人監督で、オリジナル脚本。プロデューサーはベテランの女性。しかし、大監督の夫とは離婚危機の途中。プロデューサーのもと恋人の撮影監督。新進の主演男優。アイドル上がりの主演女優。普通なら監督がしきるか、プロデューサーが有無を言わせない進行をするはずなのであるが、この設定では監督は頼りなく、プロデューサーの力は弱く、すべての登場人物たちがふらついているので、先が見えない。唯一の望みはうまく創れたとしたらちょっとした傑作になるかもしれない脚本の出来だけである。

私が思い出したのは寺島しのぶが主演した『ヴァイブレータ』という作品である。スタッフも内容もまるきり違うのではあるが、ロードムービー、単館上映であるところと、この作品で一人の女優が開花したという点で、この作品が出来あがる過程には『光源』のようなどろどろもあったかもしれないと思った。『ヴァイブレータ』は成功した。一方この作品中の映画『ポートレート24』は…。
(05.07.30記入)