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2005年07月16日(土)
「ミシェル城館の人第二部自然理性運命」 堀田善衛

「ミシェル城館の人第二部自然理性運命」集英社文庫 堀田善衛
ついに「われらのミシェル」は世界初のエッセイ『エセー』を書き始める。38〜9歳の「ミシェルの精神は、まだ明瞭な主題を見出していない。」しかし彼は書き始めるのである。後年彼はこういう事を書いている。「私は私の生活を私の行為によって記録することが出来ない。運命がそれらの行為をあまりに卑小なものにしたからである。そこで、私の思想によって生活を記録する。」私はこの言葉を『美しい』と思う。彼の行為が「卑小」かどうかは置いておくとして、彼の生活態度をうらやましく、またはひとつの思想家の在り方かなとも思う。

世は騒乱の時代である。ミシェルは隠遁者の生活をしながら、同時に新しい政府の助言者としても活躍をする。しかし彼はそのことについて多くは語らない。いっぽうで、哲学論的なことは書かない。彼の『エセー』は『人間の日常にそった、日常にどっぷりつかったところから来ている』。その中で世の中からひとつ抜きんでいる所に自分の思索を置く。こう在りたいものだと思う。

騒乱という『運命』の中で『理性』を保ちながら『自然』に書く。私はこの本の副題をそのように解釈した。
(05.05.02記入)