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2005年07月10日(日)
「ガラスのうさぎ」は80点

アニメ「ガラスのうさぎ」を倉敷芸文館に観にいく。
四分一節子監督、小出一巳・末永光代脚本、高木敏子原作、声は竹下景子、最上莉奈ほか。

意外にも表題の「ガラスのうさぎ」のエピソードは非常にあっさりしている。炎で溶けたうさぎは東京大空襲のことを幾らかは語ってはいるけど、そういう「象徴」では語りきれないことを、アニメの力を借りて誠実に語ろうとしたのがこの映画である。

予算と時間の関係なのだろう、描きこみはジブリアニメとは雲泥の差ではある。演出についても、少女が自殺を思いとどまったところ等、あまりにもあっさりしているように思えた。−−そうではあるのだが、私は正直ずいぶん惹きこまれた。ひとつは美術と脚本が非常に誠実だったこと。どちらも画面の隅々、台詞の一言一言に神経を配りまくり、当時を忠実に再現しようとしているのが良く分かった。ひとつはいままでの反戦アニメにあるように、終戦で終わりということにしていなかったこと。戦後の苦労もきちんと描いており、だからこそ「新しい憲法の話」の朗読が活きた。

悪い作品ではない。500人規模で人を呼んでも、充分満足させうるアニメである。

終わった後、会場すぐそばの倉敷美観地区をそぞろ歩いた。倉敷ガラス工芸、黒木三郎の寄せ木細工、備中和紙、ちっちゃなからくり玩具、等々店先の可愛い民芸品を眺めて歩き、雨にけぶる倉敷川を見ながら休んでいると、この倉敷の美しさを戦後最初に説いたのは皮肉にも外国人のバーナード・リーチだったなあ、と思い出した。偶然にも戦災を免れたため、この美しさが保たれたのだ。倉敷でこそ、九条は似つかわしい。倉敷九条の会を作ろうとしているらしいが、呼びかけ人はぜひ大原美術館の大原氏を、それが無理ならこの美観地区ゆかりの人を選ぶべきだと思う。