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2005年03月01日(火) ■ |
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金魚屋古書店出納帳上下」芳崎せいむ |
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金魚屋古書店出納帳上下」小学館 芳崎せいむ 「もう少し早く生まれてくればよかった。そうすれば島村ジョーの時代をすごせたのに…。」と少女は言う。「もう少し早く」とは30年前という意味。同じく「サイボーグ009」のファンである少年はこう応える。「オレにはこれからが009の時代だ。」少女はジョーに恋心を抱くという読み方をしていたのに対して、少年は作品の「世界」が好きだったわけだ。少女は少し驚いて納得する。「そうか。でもそれって…すこし怖いね。」こんな会話はしっかりこの漫画を読みこなしていないと成立しない会話ではある。でも日本のどこかにはそんな「現代」の少年少女もきっといることだろう。
この作品群には、至る所にそんな「昔の漫画」への愛が溢れている。30年前、「少年マガジン」という雑誌の中で流れ星になった002と009にリアルタイムで涙した元少年にとって、この愛情は嬉しいかぎりだ。しかしそれだけではない。作品の創りがしっかりとしていて、一編一編にきちんとした人間ドラマが入っているところが素晴らしい。「あの川べりで」「さらば火星よ」「漫画の神様」が秀逸。
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