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2005年02月01日(火)
04年映画ベスト23(その一)長文

私は毎年、学習サークルの会報にその年の映画の総評を投稿しているのですが、それをここにコピーします。あまりにも長いので二回に分けます。とはいっても、この日記にいままで載せた短評をベストの順番にほぼそのまま載せていますので、あまり目新しい文章はないはず。ただ一通り読むとその年の見るべき主な映画は半分以上網羅していると自負しています。

2004年の映画評も去年に続いて、私の合格作品を順番に並べただけのものにさせてもらいます。合格作品とは私の中で100点満点のうち80点以上の作品の事です。今年は12月25日現在104作品観ました。今年は合格作品が23作品。その中で大きな特徴は邦画がなんと12作品も入っているという事です。何が入っているかは後のお楽しみですが、今年の特徴はずばり「邦画豊作の年」という事でしょう。

その前に「あの話題作がどうして入っていないんだ。見ていないんだろう」とお叱りを受けるかもしれないので、選外になった「話題作」に付いて若干のコメントをしておきます。
「世界の中心で愛をさけぶ」今年の純愛ブームの火付け役で、今年の映画を引っ張った重要な作品であることは間違いない。長澤まさみはこの作品でやっと「女優に化けました」。残念なのは、柴咲コウの出番が付け足しでしかなかったこと。もっと短くまとめればよかった。
「隠し剣鬼の爪」大いに不満。力作であるし、心地いい感動も与えてくれるだけに、画龍点晴を欠く、永瀬、松、両者のたった一つの演技(永瀬の家老に詰め寄る所と、松の嫁入り先での苦労)に不満。私が藤沢周平を好きなだけに、私の点数はきつくなっているのかもしれません。でも二人には大事なところで命がけの演技をしてもらいたかった。
「ハウルの動く城」前作でもそうだったのですが、宮崎駿監督は分かりやすさは拒否して作品をつくっている。前作は舞台が閉じた世界だったので返ってイメージの広がりが心地よかったのだ。しかし、今回は冒頭から戦闘機、戦車が描かれ、軍服が闊歩する。それは歴史的であり、世界的な開かれた世界だ。宮崎駿が初めて「戦争」を正面から描いた、と思ってはいけない。いや、私は最後の瞬間までそう思っていた。そうでなければこの作品が終らないと思っていた。けれどもそれは裏切られる。この弱いラストはいったいどういうことなのだろう。一方「純愛」物語としては?私はとうとうハウルにもソフィーにも共感を覚えなかった。期待していたのに残念!。
あと惜しい選外としては「ゼブラ−マン」「25時」「ラバーズ」「月曜日のユカ」があります。ところでこの選外、おやおや、邦画豊作といいながらがすでに選外に邦画が5作も入っています。だとすると、あと12作にはいったい何が…。

ベスト23「花とアリス」岩井俊二監督 鈴木杏 蒼井優主演。なんとも愛しく愛しく残酷で残酷な少女の話。ここにはイメージの広がりがあります。
ベスト22「ゴジラファイナルウオーズ」北村龍平監督 松岡昌宏主演。ゴジラ怪獣総出演。待望のヘドラも出てくるし、エビラみたいなマニアックなのも出てくるし、「ジラ」という明かにハリウッド版ゴジラも出てくる。ジラの最期は爆笑もの。テンポ良く進んで、人間アクションまで盛り込んで。ゴジラシリーズの一本としては良いほうだとは思う。しかしながら、これでゴジラシリーズが終るというのが気にいらない。ゴジラ最後の年に、10年に一度という災害が立て続けに起きたのは偶然ではないだろう。(と、かってに断言)まだまだ壊すべき建物は次々に出てくる。まだゴジラは必要なのだ。なぜ私たちはゴジラを愛するのか。ゴジラはもともと水爆実験という「人類の罪」から誕生した怪獣であるが、実は人類の罪はそれだけではない。戦後の繁栄は実はとんでもない虚妄の上に建っているのではないかという漠然たる想いを私たちはみんな持っているのではないか。だからゴジラが国会議事堂を壊し、東京ツインタワーを壊し、福岡ドームを壊し、各地域の原発を壊していくことで私たちは「癒し」を得ているのではないか。ゴジラは破壊神です。逆説的ではあるが、日本の高度成長が生んだ神であったと私は思う。
ベスト21「釣りバカ日誌15」朝原雄三監督 西田敏行 三国連太郎主演。 久しぶりに映画館で見た。もっぱら二人は恋の指南役に徹するようになった。というよりか偶然二人を引きあわすだけになった。それでも笑えるのである。お気楽サラリーマンの浜ちゃんが健在でいるだけで楽しくなってくる。見事なワンパターン化。1000円興行のせいか、客の入りはマズマズ。こういう作品は劇場で見るにかぎる。だってみんなと笑えるもの。あの着信音とポスト私も欲しい。
ベスト20「トリコロールに燃えて」ジョン・ダイガン監督・脚本 シャーリーズ・セロン主演。奔放で美しい上流階級の娘、英国の労働者階級の男、スペイン内戦を逃れてきた娘、よくある男女三角関係の物語。しかしそれだけではない。1930年代のパリ、芸術が花咲き、スペイン内戦に義勇軍が馳参じる。40年代の欧州、ドイツがパリに進駐し、レジスタンスが闘われる。久しぶりの欧州歴史大河ドラマ。しかし、それだけではなかった。「モンスター」の撮影直後にすぐこの映画をとったシャーリーズ・セロンが、疲れも見せず、惚れボレするように美しく、本格女優としてひと皮剥けて登場していた。
ベスト19「スパイダーマン2」サム・ライミ監督 トビー・マグワイヤ主演。アメリカ人はどうしてこうも「正義」という言葉が好きなんだろう。スパイダーマンの悩みはそのまま現代アメリカ人の悩みでもある。でもやはりアメリカ人は「正義」を選ぶのである。スパイダーマンはどのようにして「正義」を選ぶのか、注目して欲しい。アメリカよ、悩め、悩め、もっと悩め。
ベスト18「ラブアクチュアリー」監督・脚本 リチャード・カーティス。群像恋愛劇。見てみるとなんとまあ幸せな気分になれることか。こんなにもたくさんのエピソードを詰め込みながら一人一人に見せ場をきちんと作っている。全員が幸せに成るわけではない。その事が私にはとても心地いい。演技として秀逸なのはエマ・トンプソンの泣き。脚本として秀逸なのはアンドリュー・リンカーンの紙芝居。キャストとして秀逸なのは英国首相と小太り秘書のくみ合わせ、リーアム・ニーソンのお父さんぷり。
ベスト17「ザ・デイ・アフター・トゥモロー」迫力満点の映画。決して作品として優れているとは思えない。科学的にどうかなと思えるような描写も目立った。しかしこの映画は今年観るのに意義があった。異常気象、台風、地震、津波、まるで映画をなぞるかのように今年は世界各地、特に日本で天変地異が頻発した。映画を観て肝を冷やして欲しい。たぶん大統領選がらみだったのだろうが、この作品は明かに京都議定書を批准しないブッシュ政権を批判している。その志も了としよう。
ベスト16「ターミナル」スティーブンスピルバーグ監督 トム・ハンクス主演。クーデターで事実上祖国が無くなった男性が9ヶ月、ジョン・F・ケネディ空港のターミナルで暮らすことに。クスリと笑い、大いに笑い、やがてしんみりとする、素敵な「旅」の物語。いや、「人生」の物語。男は暮らし始める。寝るところを確保し、言語を覚え、小銭の稼ぎ方を覚え、仲間が出来て、仕事をつかみ、恋をする。そして思い通りにいかないことも多い。しかしそれこそ「人生」というものだろう。男はそれでも「旅」の目的を達成する。仲間に支えられて。9ヶ月も待って達成したのだ。夢を忘れず、待つこと、それこそ「人生」というものだろう。
ベスト15「華氏911」M.ムーア監督編集。「この映画は政治的に偏っているのでおかしい。」というテレビの番組が堂々と流され、「だから私はこの作品を評価しない」という若者が何人も続出した。なんてばかげた話かと思う。どのような作品であれ、偏っていない作品などあるはずがない。別の言葉で言えば、主張のない作品など作品には値しない。特にドキュメンタリーはそうだ。ムーア監督はアメリカの人々に、あるいはそのアメリカを支持している国々の人々に、「実は自分たちはばかげた指導者のおかげで沈みつつあるのだ」と衝撃的な映像を次々と突きつける。
ベスト14「いま、会いにゆきます」土井裕康監督 竹内結子 中村獅童主演。小さい子供を残して死んでしまった母親は、雨の季節に帰って来ると言い残していた。主役の二人に存在感があった。純愛映画は引く事が多い私ではあるが、いろんな伏線を見事に活かしたこの映画は最後しみじみとさせた。泣きはしなかったが。そこで一首。「出会いとは不思議でもあり奇跡とも必然とでもいえるものかな」くま
ベスト13「ヴァイブレータ」寺島しのぶ主演。いきずりの恋。ずっといっしょに生きていかなくてもいい。しばらくお互いの体温を感じているだけでいい。男と女。ウソと真実。単純だけど、あとからいろんな場面が思いだされて、あとを引きずった不思議な映画。