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2005年01月21日(金)
DVD「美しい夏キリシマ」は70点

DVD「美しい夏キリシマ」黒木和夫監督 原田芳雄 石田えり 左時枝 小田カオリ
1945年八月、宮崎県霧島地方の、ほんの数日の物語。確かに、事件らしい事件は起きないし、この映像の中で出された「問題」は何一つ解決はしないし、黒木和夫の自伝だという割には、康雄はこの作品の中で特別いちばん重要な役割ではない。確かに期待して観ると肩すかしを食うかもしれない。

康雄の同級性の妹は、沖縄の闘いで両親とも死んでいる。いつも屋根に登っている幼い妹はとんでもない修羅場をくぐってきているはずだ。フィリピンから片足を無くして帰ってきている男や、戦争未亡人で春をひさいで生活用品を稼いでいる女、その女を買う満州戦役から転属してきた男、これから特攻に出ようとする海軍の男、失恋して長崎から帰ってくるとその数日後に長崎の悲劇を知る少女、軍隊の鉄拳制裁、。それらが、いち地方の地主小作関係が残っている霧島を舞台に「日常」として描かれる。

明確に「生き残ったものの心情」を描いている「父と暮らせば」を観た後なので、この作品は良く分かった。黒木和夫はこの作品に全てを注ぎこみすぎている。だから分かりにくい。しかし言いたい事は単純。戦争で生き残ったものは日常を生きるしかない。しかし、ただ生きるのではない。けっしてわすれないこと。「ざくろのように割れた」友の頭を決して忘れない事。日常を生きながら決して忘れない事。それは現代の私たちにもひとつや二つはないだろうか。

DVDでは、なんと佐藤忠男と監督が作品をすべて見ながら丸々対談するという映像や、メイキング等、ものすごく「長い」特典映像が付いている。ちょっと充実しすぎている。