初日 最新 目次 MAIL HOME


読書・映画・旅ノート(毎日更新目指す)
くま
MAIL
HOME

My追加

2005年01月15日(土)
「風水と天皇陵」北村多加史

「風水と天皇陵」講談社現代新書 北村多加史
著者によると、奈良や京都にある天皇陵の多くは風水の思想によりその設定場所を決めているということである。著者によれば「風水とはいかにして自然の循環になじませるか、エコロジーの発想を持つ思想であった」らしい。けっして、いかがわしい占いではないとの事である。この辺り著者の記述はずいぶんと慎重である。ことが天皇に関わるだけに世の反発を警戒しているのであろう。しかし書いている事は随分具体的科学的であるように私には思えた。天皇陵への風水の影響は遅くて6世紀、7世紀の飛鳥時代にはそのその影響の多くを見て取れるという。著者の素晴らしいのはその知識を本から得るのではなく、実際に発祥の地の中国の墓を見て回り、日本の土地を歩きとおして確信しているところにある。後半はほとんど、風水の観点から見た天皇陵踏破ガイドブックである。私はまだこの本を片手に歩きまわってはいないので、100%本当だったというわけにはいかないが、ほぼそうだろうと思う。
私はこれまでいろんな古墳や弥生の墓を見て回ったが、ひとつわかるのは、その土地を選定するのは全て理由があるという事だ。自分の国を見渡す事ができる。あるいは神の山の尾根の先端につくる、という例をつぶさに見てきた。我々の祖先が当時の最先端の知識であった風水思想を取り入れなかったと思うほうがおかしい。むしろ、私は6世紀に入ってきたという説に疑問を持つ。吉備の国の最大の規模を持つ造山古墳(5世紀)の立地が、この本による「谷奥部突出型」に当たるのではないか、と強く思うからである。ぜひ、著者の立地調査を希望する。