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2005年01月14日(金)
「アルバイト探偵 調毒師を探せ」大沢在昌

「アルバイト探偵 調毒師を探せ」講談社文庫 大沢在昌
シリーズ第2弾。このシリーズは高校生冴木隆の一人語りで語られているので、リュウ君の心情は全て分かるのだと思っている人がいたら、最終話の「アルバイト行商人」で大間違いである事に気が付くだろう。この章で冴木親子の秘密が明かになるのであるが、秘密を知ったリュウ君の心情は(いろんな感情がうずまいたに違いないが)一切語られていない。つまりこの小説の「地」の文はリュウ君の「心情」が語られているのではなく、リュウ君の語りたいことが語られているに過ぎないのである。つまりこの小説、随分軽い読み物ではあるが、やはりハードボイルドなのである。主人公は人一倍饒舌ではあるが、いちばん大事な事は語らない。だからしきりにこ「この不良親父は」とか、「ヤクザ親父」とか言われている彼の「親父」に対する感情は、「地」の文とはそうとう違うだろうという事も推察されるのではある。私でなくても分かるとは思うが、リュウ君、この親父の事を男として、仕事仲間として、そして「肉親」として尊敬し、愛している事がいろんなところから見え隠れする。それを親父にも読者にも照れて言わない所がまた「可愛い」のではある。