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2005年01月05日(水)
「うまい!と言われる文章の技術」 轡田隆史

「うまい!と言われる文章の技術」知的生き方文庫 轡田隆史

書評の書き方を学ぶためだとしたら、この本はうってつけかもしれない。句読点の付け方、文章を削るときのポイント、「書きだしにテーマのオーム返しはしない」、借り物の引用より自分の体験を、等々。なるほどなるほどの世界である。しかし、私は書評のために買ったのではない。多くの人もそうだろう。「いつかは自分史を。」「いつかは小説を」「会社でのレポートのため」いろんな「本当」の理由がきっとあるはずだ。そして、そのための文章教室としては少しずつこの本の記述では足りない事を、読者は読む前に覚悟しておいたほうがいいだろうと思う。小文の書き方としては参考になるが、長文の書き方としては不足が目立つ「文章読本」である。

さすが長年文章教室で教えてきただけあり、小論文、書評のような小文の作り方で、大事な事は書かれてあるように思える。推敲とかの技術的なことだけではない。「心構え」を中心に置いている所がこのほんのいいところであろう。「なぜ」を大切にしよう、とかいうのはその代表例だ。

ただ、私は分からなくなる。この人は誰のために文章教室を開いているのだろう。ここのある心構えや技術は基本的には、新聞記者として、あるいは論説委員としての著者のキャリアの復習でしかない。しかし、新聞記者入門として書いていないのは、「取材」の項がすっぽり抜けている事からも明かではある。いったいこの本を買うような人間はなにを期待して買うのだろう。そのところがこの本の最初から最後まででひとつも明かにしていない。それはつまり、私は「なぜ」この本を買ったのだろう、ということに繋がるだろう。