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2004年12月01日(水) ■ |
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「ビフォア・ラン」重松清 |
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「ビフォア・ラン」幻冬舎文庫 重松清 幻の文庫本がやっと再版された。6年ぶりの再版。やっと読む事が出来た。まだ無冠だった頃の6年前ならともかくそれ以降賞を重ね、今や現代を代表する人気作家のデビュー作が絶版に近い状態になっていた事は、おそらく誰かの意思が働いていたのではあろう。 私は実は出来が悪い作品なのではないかとずっと心配していた。なるほど、24歳のときに原型を作ったらしく、後年のテーマである「家族」は当然浮かんできていない。しかし、切ないほど個々人が追い詰められて行く様はすでに出ているし、それにもかかわらず、読後感が「温かい」重松清の最大の特徴も、すでに出ている。読みだすと巻置くあたわず、一気に読み終えた。心配は杞憂に終った。デビュー作らしいみずみずしい作品である。 解説の池上冬樹が、「四十回のまばたき」「舞姫通信」「見張り塔からずっと」「幼な子われらに生まれ」「ナイフ」「定年ゴジラ」までの重松清の仕事を総括し、「国民的な人気を誇る大衆作家になるのではないか」と予言しているのはさすがである。私はその2年後「ナイフ」に出会い、それ以降文庫本を本屋で見かけると「無条件」に買うのを習いとしている。
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