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2004年11月17日(水)
「隠し剣鬼の爪」は75点 

「隠し剣鬼の爪」山田洋次監督 永瀬正敏 松たか子 小沢征悦 
不満である。力作であるし、心地いい感動も与えてくれるだけに、画龍点晴を欠く、永瀬、松、両者のたった一つの演技に不満である。
永瀬の場合は堀家老に激しく詰め寄る場面。普通なら死を覚悟しての詰めよりでなければならないはず。しかし永瀬の場合、まるで現代のサラリーマンが常務に詰め寄るように無防備だ。「たそがれ」のヒロインの現代的だったのはよかった。彼女の場合はそれなりに女性ということもあり、リアルだった。しかし、宗蔵は跡取り息子である。あのような言葉は吐いてはいけない。吐くときには今にも鬼の爪を使うような迫力が欲しかった。結局永瀬には子の役は無理だったのかしれない。松の場合、彼女の質素で可憐で顔を隠しながら笑う場面など、まさに花のある女優、魅力があったが、しかし、一番の見所は嫁入り先の商家で、ボロボロにされ、納戸でねかされている場面であろう。ここが相当悲惨に描かれていないと、宗蔵がたえを救いだすことにリアルさが無くなり、物語自体が成立しなくなる。しかし質素な身なりはしているがたえは丸々健康そうで、しかも清潔そうで、死にそうな雰囲気は無いのだ。まつはせめて10〜20キロ減量して欲しかった。せめて宗蔵におぶわされたとき、「おら、くさぐねぇべか」ぐらいは言って欲しかった。原作ではトイレも行かせて貰えず、たれ流しだったはず。
監督の気持ちはよく分かる。前はしがない貧乏父さんにエールを送り、次ぎは若者にエールを送りたかった。上司に対して少しはうっぷんをハラしたかった。
ずっと前に鬼の爪は読んでいたのに、あの隠し剣の使い方、なかなか見事であった。ひとえに名優緒形拳の存在感によるところが大きい。