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2004年11月06日(土) ■ |
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「塩の道」宮本常一 |
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「塩の道」講談社学術文庫 宮本常一 信濃などの山の中でも当然のことながら塩が必要とされた。その塩を運ぶ道は街道ではなくそれに沿った細い道が使われている。なぜか。牛で運ばれていたからである。途中で草を食べる必要があったのだ。等々、綿密な民俗調査から明かにされる昔の人の生活の知恵の数々が次々と出てきてなかなか楽しかった。例えば塩サケなどは保存のためだけではなく、その塩を必要とされていたのだということ。あるいはニガリのある「悪い塩」をわざわざ買い、そのニガリを抜く事で山中の人々は豆腐を作るためのニガリを確保していたのだということ。
長い歴史の中で「道を開く」という事はどう言う事なのか。その道が必ず海に通じていたという事はどう言う事なのか。「道も一つの遺跡である」街道などの当時のクニが作った道だけでなく、民衆が作ってきた道をどう見るかという視点をくれたことが今回の収穫であった。
宮本民俗学は柳田民俗学とは違い、綿密な民俗調査のあとがはっきりしていたり、歴史文書資料の活用など、学術性が高いところに特徴がある。しかもその眼差しは常に民衆の立場に立ち温かい。それは彼自身が若い頃からずっと自分の足で日本中をくまなく歩いてきた成果なのだろうと思う。
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