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2004年09月15日(水) ■ |
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「華氏911」は80点 |
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「華氏911」M.ムーア監督編集 「この映画は政治的に偏っているのでおかしい。」というテレビの番組が堂々と流され、「だから私はこの作品を評価しない」という若者が何人も続出する。なんてばかげた話かと思う。どのような作品であれ、偏っていない作品などあるはずがない。別の言葉で言えば、主張のない作品など作品には値しない。特にドキュメンタリーはそうだ。沈みゆく豪華船の貴重な調度品を静かな映像でとるか、逃げ惑う人々や沈んでいく全体像をとるかは、どちらも同じ事実の映像であるが、作る側の意図によってまったく違う作品になるのである。ムーア監督はアメリカの人々に、あるいはそのアメリカを支持している国々の人々に、「実は自分たちはばかげた指導者のおかげで沈みつつあるのだ」と衝撃的な映像を次々と突きつける。圧巻は9.11に小学校授業参観時に「アメリカが攻撃されています」と側近に囁かれたあとのブッシュの何も出来ないでいる7分間の映像である。まったく馬鹿でまぬけな指導者なのだが、この大統領がイラク戦争という悲劇を起こし、それに追随する日本は初めて軍隊を海外に派兵したのだから、笑いごとではないのだ。感動的なのは、戦争を支持している母親が息子の死をきっかけに180度考えが変わる瞬間をとった映像である。人は世間に流されていたとしても、一つ決断をするごとに「個人」になっていく。ホワイトハウスを前に母親は闘う決断をする。
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