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| 2004年07月18日(日) ■ |
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| 「戦争が遺したもの」新曜社 鶴見俊輔 上野千鶴子 小熊英二 |
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「戦争が遺したもの」新曜社 鶴見俊輔 上野千鶴子 小熊英二 今年前半期では、この本がベストワンである。 鶴見俊輔の得がたいキャラクターと数奇な運命。そして戦争がいかに日本の知識人に大きな影響を与えていたかということ。「従軍慰安婦」問題、「思想の科学」創刊、60年安保、ベ平連、等々で語られる「秘話」。丸山真男、竹内好、桑原武夫、都留重人、鶴見和子、鶴見良行、武谷三男、谷川雁、藤田省三、小田実、吉本隆明、等々の豊富な人間関係。鶴見俊輔評伝でもあり戦後日本思想史にもなっている。 しかしそれだけではない。聞き手の二人が単なる聞き手になっていない。「一日目」の最終近く、上野千鶴子は自らの運動の責任を背負うかのごとく鶴見の「従軍慰安婦」保証問題への関わりを「追い詰めて」行く。こんな対談は初めて読んだ。小熊英二も所々で鶴見の「これはヤクザの仁義なんだよ」という一種の決まり文句に鋭く突っ込んでいく。全然慣れあいでは無い。だからこそ臨場感溢れる「戦後の再現」が実現できている。そこまで突っ込んでも読後感がすがすがしいのは二人が間違い無くこの戦後の日本を代表する思想家を尊敬している事が随所に見られるからである。私もこの本を読んで鶴見俊輔が単なるプラグマティズムを輸入した知識人だったという印象を変更した。もっと複雑で魅力的な編集者であり、行動家であり、日本の戦後に大きな影響を与えた人物なのである。 唯一困ったなあ、と思ったのは、この本を読むとどうしてもあの分厚くて高い小熊英二の「〈民主〉と〈愛国〉」を読みたくなること。(04.05)
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