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2004年07月15日(木)
「宿命」講談社文庫 東野圭吾

「宿命」講談社文庫 東野圭吾
最新の帯にこうある。『のちの名作「秘密」「白夜行」そして「幻夜」へとつながる重要なテーマを秘めた原点ともいえる小説』。これにひかれて読んで見たのだが、果たして『テーマ』といっていいものか。

さて、確かに、最後の10Pに真の主題らしきものが現れるのだが、それほど意外でも感動的でもなく、私には失敗作の様に思えた。本格推理物としてトリックに本腰を入れるのでもなく、松本清長みたいに社会派推理を目指すのでもない。しかし『謎』だけは提示する(今回は宿命)といのは確かに「秘密」や「百夜行」と構造上は似ている。しかしそれは「テーマ」ではなく、書き方の問題だろう。

問題はいくつもあるが、最大の問題は各人物像がすべて中途半端に終わっているという点にあるのだろう。人物造形に成功した例として「百夜行」の桐原亮司と西本雪穂では、私はやっと桐原だけそれを達成したと思っている。「幻夜」はまだ読んでいないので分からない。人間を描くというのは最大の「謎」を描くということなのだと、つくづく思う。(04.06)