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2004年07月11日(日)
「ぼんくら」講談社文庫 宮部みゆき

「ぼんくら」(上)講談社文庫 宮部みゆき
現代は推理小説の成立が非常に難しい時代である。捜査方法はますます分業化、複雑化してきており、犯罪方法は非常に残酷化、犯罪動機は「サイコパス」に代表されるように、「分からなく」なってきている。

そういう現代にあえて宮部みゆきは挑戦しているのではないかと私は推測している。江戸・深川の鉄瓶長屋という「閉じられた社会」を舞台に、ぼんくら同心平四郎という「探偵」を主人公に、「謎」を提示して解決に向かわせている。典型的な昔の探偵小説である。そこに描かれるのは今は失われているかもしれない下町の「人情」、そして登場人物たちのさりげない「知性」である。現代という時代はもはや江戸時代まで辿っていくことでしか、探偵小説がもたらせてくれる癒し感は得られないのかもしれない。

上巻はいわば謎提示編。一息で読めるだけにここでいったん休憩を入れて下巻に向かうのも良いかもしれない。「伏線」はたくさん見つかった。でも私はまだ謎解決までいたっていない。もう一度読みなおそうかしら。


「ぼんくら(下)」講談社文庫 宮部みゆき
うーむ、こういう結論だったか…。

時代推理小説として、際立った傑作とは言いがたいが、キャラクター造詣の妙とあいまって充分楽しめる作品にはなっている。特に後半異彩を放つ美小年探偵弓之助、人間テープレコーダーおでこ、そして岡っ引きの政五郎。

全てが「ふ」に落ちたわけではない。特に冒頭の殺人事件の処理の仕方は納得がいかない。

ただ、短編小説集と思わせて、ひとつの長編に仕立てた宮部みゆきの今回の「仕掛け」は気に入った。(04.05)