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2004年05月14日(金)
『ロード・オブ・ザ・リング』あるいは『指輪物語』の世界(導入編)

「ロード・オブ・ザ・リング」あるいは「指輪物語」の世界

<導入並びにあらすじ編>
ピータージャクソン監督の「ロード・オブ・ザ・リング」三部作がついに完結した。私は2月7日の先行上映で早速その終りを見て、この作品が無事「名作」に成った事を喜んだ。三部作と名打って失速する作品は多い。(「マトリックス」「スターウオーズ」)これは最初から名作たる原作が在り、一挙に撮影したからこそ出来た10時間にも及ぶ映画史に残る傑作である。私は1作目の映画を見て以降この物語に惚れこんだのだが、原作に着手したのは2作目を見る直前であった。その後何度となく映画を見なおし、9ヶ月掛けて原作の全9巻を読み終え、(実は追補編10巻はこれから読む)私はなんとなくこの「指輪物語」体験なるものを自分なりに整理しておくべきだと思った。この物語は一つの世界観である。その世界観に三百時間以上浸かってしまった私は、自分では望まなくても約半年間指輪と共に旅をしたフロドと同じように一生拭えない「影響」を受けたみたいだ。人間である私は「灰色港」に行く事は出来ないが、なんらかの決着は付けるべきだろう。この駄文はそのためのものである。

映画をネタバレ在りで紹介して、「この作品を見るべきだ」と勧めるのは基本的には反則である。しかし、この作品に関しては物語の大筋・あるいは幾つかのエピソードは紹介しても映像で見ることの興は削がれないし、かえってあまりにも長い作品の全体を理解するには必要な事だろうと信じる。よって先ずは荒っぽい大筋を述べ、次ぎに映画に付いての私の感想をネタバレ在りで述べ、次ぎに原作に付いての私の感想をネタバレ在りで述べ、そのあと全てを見終わったあとの私の感想を述べていきたい。ネタバレは聞きたくないという人はこれ以降は読まないで欲しい。

あまりにも荒い映画の大筋はこうである。「昔、冥王サウロンは世界を統べることの出来る指輪をつくった。人間とエルフ(不死の者。天使のような外見)の連合軍は偶然にも指輪を切り落とす事に成功し、勝利する。指輪は行方分がからなくなり長い時が過ぎた。やがてゴラムがそれを見つけ、ホビット庄のビルボ(ホビットの外見は小人)が次ぎに所持する。サウロンが復活し、モルドールで世界を暗黒の地にするための準備を始めた。あとは指輪を手にいれるだけだ。灰色の魔法使いガンダルフは指輪が見つかる直前に指輪をホビット庄のフロドに託しエルフの里に導く。エルロンドの会議が開かれた。エルフ・人間・ドワーフ・ホビット・魔法使い、つまり白の勢力が一同に会する。サウロンに勝つ方法は何か。指輪を逆利用する事は出来ない。サウロン以外には使いこなせないからだ。指輪をサウロンの住む敵地滅びの山の火口に捨てるしかない。あまりにも困難な旅である。誰も手を上げない。ついに小さきものフロドが立候補する。それを助けると、ガンダルフ、エルフのレゴラス、ドワーフのギムリ、ゴンドールの執政の息子ボロミア、野伏せ実はゴンドール国の末裔アラゴルン、そしてホビットからはフロドの親戚メリーとピピン、親友サムがついて行く事に成った。旅は困難を極める。モリア坑道ではガンダルフを失う。途中でボロミアが指輪の誘惑に負けフロドから奪おうとする。ボロミアは自ら恥じ、そのとき襲ってきた(サウロンの同盟者サルマンが放った)オークと闘い死ぬ。フロドとサムは指輪が皆に悪影響を与えていると悟り単独行動で滅びの山に向かう。アラゴルンたちはオークにさらわれたメリーとピピンを追って行くがそこで白の魔法使いとして復活したガンダルフに再会し、サルマンに滅ぼされそうになっているローハン王国に出向く。メリーとピピンは森の精の木の髭に助けられ、彼らと共にサルマンの住むアイゼンガルドを滅ぼす。一方アラゴルンたちもローハン国王セオデンと共にヘルム峡谷で大攻防戦の末、一千の軍勢で二万のサルマン軍を退ける。一方フロドたちはもと指輪持ち主で、500年間指輪と共に過ごした影響で人間らしさをとどめていないゴラムを見つける。ゴラムは指輪を盗むためにずっと彼らの旅に付いてきたのだ。フロドたちは彼に道案内をしてもらう事で、彼が付いてくる事を許す。しかしゴラムはモルドールの入り口でフロドたちを罠にはめる。クモの怪物に仮死状態にされたフロドをサムがなんとか助け、彼らは滅びの山に向かう。ゴンドール国がサウロン軍によって滅亡の危機に瀕していた。ガンダルフはいち早くゴンドールに行き、息子ボロミアを失い神経衰弱状態に陥っている執政デネソールの代わりに第一弾のサウロン軍とミナスティリスで闘う。ローハン軍の応援がやってきたが、それでも劣勢はあまり変わらない。ついにはアラゴルンたちが国王の威厳のもと死人の大軍勢を引きいれ、闘いに参戦し、やっと勝利する。この闘いでローハンのセオデン王が死に、執政の息子ファラミアが瀕死の重症に、デネソールは錯乱して焼身自殺し、ローハンの姫エオウィンは敵の軍団の大物を倒した代わりに重症に、メリーも傷を負う。しかしこれでもサウロン軍の優勢は変わっていない。唯一の希望はフロドたちが指輪を火口に投げ込む事だけになる。サウロンの目を指輪からそらすため、ただそれたけの為にローハン・ゴンドール連合軍二万は二十万のサウロン軍が待つ黒門に出向く。まさに連合軍がサウロン軍に壊滅されかかっているときにフロドたちは滅びの山の火口に立つ。しかし最後のときに至りフロドは指輪を捨てる事が出来ない。そしてあろうことか指輪を自分のものにすると宣言する。そしてまさにそのとき、ゴラムが指輪を奪いに最後の賭けに出る。二人は格闘し、指輪を噛みちぎって奪ったゴラムは自身ともども火口に落ちていき、指輪は滅ぶ。それによりサウロンは滅び、ゴンドールの国は滅び、サウロン軍は敗北した。平和が戻った。アラゴルンは国王としてゴンドールに帰還する。エルフの娘アルウェンと結婚したのを見届けたホビットたちはホビット庄に帰る。平穏なときが流れたが、フロドはもうもとの自分に戻れないのを感じていた。時代は中つ国第三紀が終り、人間の世紀たる第4紀が始まろうとしていた。自分の時代が終った事を悟っていたエルフと魔法使いは灰色港より不死の国に旅立つ。フロドはヒルボと共にその船に乗る事が許された。指輪の保持者だったからだ。思いもかけない別れに悲しみながらサムは自分の妻と子供たちの住むホビット庄に戻っていく。」物語はホビット庄で始まりホビット庄で終る。これは偶然ではない。この事に付いてはあとで述べたい。いやはや荒いあらすじといいながら長くなってしまった。物語の骨子は「指輪を捨てる旅」である。骨格がしっかりしているので世の「終らない物語」のように複雑ではないので助かる。しかも大長編なので、ここで書いたいろんなエピソートや、ここで省いたいろんな物語が実に豊かなのである。それどころではなくこの大長編に書かれていない膨大な量の世界観が背後にあるのである。私はまだその入り口に立ったばかり。さらに旅していくかどうかはこれからの決断であろう。私はこの荒筋にわざと固有名詞をたくさんいれた。固有名詞を間違えるとこの作品の理解に重大な支障をきたすからである。特に冥王サウロンと元白の魔法使いサルマン、サウロンの国モルドールと執政の国ゴンドールは非常に間違いやすい。ゆめゆめ気を付けるように。