|
|
2003年09月21日(日) ■ |
|
「天然まんが家」本宮ひろ志 |
|
「天然まんが家」集英社文庫 本宮ひろ志 本宮ひろ志は私にとっては、特別なまんが家である。彼が名作を描いたからではない。彼の作品の中には一本の名作もない。しかし忘れられない作品があるのだ。「男一匹ガキ大将」はそれである。誰もが初めて買ったレコードは擦り切れるまで聴いて忘れることが出来ないように、初めて買ったマンガの単行本なのだ。1〜3巻まで買い、まさに擦り切れ、ぼろぼろになって読めなくなるまで何度も読んだ。 一人の「不良」がカンと度胸と行動力で成長していき、やがて全国の不良を一つにまとめあげるというストーリーは当時の少年にとってはものすごい魅力的であった。今回この本を読んで、全国制覇に至る過程はそのまま本宮自身の私生活とリンクしていたのだと分かった。一人の「素人」が、最初は一人でやがて数人の「素人」スタッフと、やがては「少年ジャンプ」を一番人気まんが週刊誌までに育て上げる過程。文字とおり反吐をはき、のたうちながら描き、それが漫画の迫力に繋がっていた。最後の決戦のときは本当はいったん恋人と駈け落ちして投げ出したのだという裏話。面白かった。陰の「ガキ大将」を読むみたいだった。漫画の完成度は低いが忘れることの出来ない作品であった。 その後の彼の作品は面白いものもあるが、ネームまでスタッフに任せるような仕事なので認めるわけにはいかない。特に女の子の描写を妻に描かせているのは断じて許せない。「私のマンガの中で、妻の描いてくれる女性の絵がなければ、私のマンガ家としての寿命は、絶対といっていい確信として『男一匹ガキ大将』一本で終っていただろう」。女の子の顔がかって「りぼん」の人気作家だったもりたじゅんの作風に似ているなあ、とは思っていたのだが、全面的に描かせているとは、それで「本宮ひろ志」のペンネームで雑誌に載せているとは。こんなことをどうどうと書く本宮の神経が私にはわからない。
|
|