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2003年09月16日(火)
『春の惑い』田壮壮監督

『春の惑い』田壮壮監督(『古城の春』リメイク)
夫は病を得て癇癪持ちになった。妻はそんな夫の性格の変わりようや病のこともあり寝室を別にする。それがまた夫には悲しくてたまらない。やがてそこに夫の親友であり、妻の昔の恋人であった男がやってきて、旧家である夫の家にしばらく泊まることになった。1946年、春。上海郊外の蘇州。まだ至るところが日本軍の爆撃で瓦礫と化している。古城からの眺めは美しい。河がゆったりと流れ、田んぼが広がっている。そして美しい妻の愛を勝ち取れない若旦那、買い物とハンカチ刺繍の退屈な日々を送っている妻と、若く魅力的な医者であり、親友であり恋人(妻との関係を夫は知らない)男との三つ巴の心理戦が闘われる。
撮影は昔ながらの南中国の典型的な家屋から離れない。家の造りは南方らしく風が通るように工夫されており美しい。現代から見て、この三つ巴の心理戦はあまりにも倫理観や、世間体を気にしすぎており、正直(私には)物足りない。しかし、恋のためらい、嫉妬、そして人生を掛けて愛するということはどういうことかを、時代と場所を制限して、だからこそ純粋にうたいあげており、名作の気品を持つ作品であった。
最初、まるっきり夫の目を見ないで会話する妻が最後になると真正面ではないが、盗み見るように夫の目を見るようになった。その変化がこの作品の全てだろう。