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2003年09月13日(土)
『きっと君は泣く』山本文緒

『きっと君は泣く』角川文庫  山本文緒
「いいかい、椿。美人なんていうのは、雰囲気なんだよ。ハッタリなんだよ。いくら形が整ってたって貧乏臭かったり卑しかったりしたら何にもならないんだ。」椿はずっと年老いてもりんとした美しさを保っている祖母が自慢だったし理想だった。その祖母を手本として、椿は自分の容姿を「才能」だと思い活用している。自分の傲慢さも気にならない。祖母がそうだからだ。しかしその自慢の祖母がボケていく。祖母は本当に「美の理想」なのだろうか。それはこの作品の隠れたテーマだ。

読んでいくうちに椿をどうしようもない女だ、と確かに思ったりする。昔の同級生が「あんたは3歩歩くと、誰かが親切にしてくれたことなんか忘れちゃうんじゃない?鶏よりひどいわよね。目先のことしか見えないの。先のことを想像する力が無いのよ。」と悪態をつくのももっともだと思ったりする。ただしこの作品は椿の目線で描かれているので、椿に悪気が合ったわけではないことは分かるという仕掛けだ。そんな椿も最終場面にまで来ると「可愛いところもあるじゃないか」などと思ったりする。女性からは「甘い」といわれるかも。