日々あんだら
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2006年01月21日(土) |
コニミノの撤退と写真業界の今後に関する勝手な考察 |
1月18日、僕はFOMAの電波が通じない場所に出張し、ほぼ丸1日をそこで過ごした。 仕事が終わり、駅に向かうタクシーの中でメールをチェックすると、茶々さんとしんさんからメール。
「コニカミノルタがカメラ事業をソニーに譲渡して、撤退するらしいよ」 な、なにーーー!!!
http://konicaminolta.jp/about/release/kmhd/2006/0119_04_01.html
ということなのである。 そしてその日から、あんだらのアクセス数が急増している。 どうやら「hideがこのことについてなんて言うかチェックしなければ」という人が多いらしい。(笑)
ということで、今回の件に関する僕の感想。 ここから先は完全に僕の主観だけで書くし、将来の予想なんか特に根拠のある話ではないので、 そのつもりで読んでください。 (今日もカメラネタなので、興味の無い人は飛ばしてください。あと、めちゃくちゃ長いです。^^;)
昨年半ばくらいから、カメラ業界の変動はすさまじい。 はっきり覚えてないから抜け落ちがあるかもしれないし、厳密には間違ってるかもしれないけど、 ・ロモLC-A製造中止 ・アグファのフィルム部門経営破たん ・コンタックスのカメラ事業撤退 ・ポラロイドSX70フィルム製造中止 ・コニカミノルタのフォトイメージング事業縮小発表 ・ニコンがF6とFM10を残し、フィルムカメラから撤退 (順不同)
と、これだけある。 そこへ来て、昨年末フォトイメージング事業の縮小を発表したばかりのコニカミノルタが、 縮小どころか完全撤退である。 ミノルタのカメラ・レンズも、コニカのフィルムも、民生用は終わってしまうのである。 デジタル一眼レフのみ、ソニーが事業をひきついで行くようなので、Aマウントの寿命は繋がったわけだけど。
まあ、元々やばそうやなぁとは思っていた。 α-SweetDはそこそこ売れていると聞いていたが、次の開発計画が聞こえて来なかった。 新しく発売されるレンズは全てタムロンのOEM。 そして元々販売されていたレンズが、なんのアナウンスもなくカタログから落ちて行く。 「来春発売」とアナウンスされたAF 35mmF1.4G(D)も、一報以来何ヶ月待っても続報がない。
しかし、全てが終わってしまうとは思ってもいなかった。
αデジタルはソニーに譲渡され、一応存命するらしい。 元々ソニーは一眼レフシステムを持ちたがっていて、コニミノとの業務提携も発表してたから、 渡りに船だったんだろう。
しかしなぁ…というのが正直な感想である。
僕がα-7Dを使っているのは、ミノルタの色が好きだからである。 そして、ソニーの色はどうしても好きになれないのである。 最近発売されたソニーの最上級機の作例も見てみたが、どうしても色が作り物っぽい。 そして、あんな多画素機だったらそのままでも十分解像度があるだろうに、 その上シャープネスをかけすぎているようで、ギスギスして感じられる。 (あくまで僕の主観です。あれを好きという人もいると思うけど)
カメラ部門の技術者もコニミノからソニーに一部移るらしいけど、ミノルタの色がどれだけ残るだろう? ソニーが元々デジカメを作っていないメーカーだったらともかく、 ソニーにはソニーの技術者がいて、ソニーの色があるのだから、 ミノルタの色が消されて行くのは間違いないだろうと思う。 たとえ日本で最古のフィルムメーカーかつカメラメーカーの一つだったとしても。
デジタルカメラとは消耗品である。 たとえ一眼レフでも1年経てば型落ち、3年で時代遅れ、5年後には化石である。 (大袈裟だと思う人は5年前のデジカメを思い浮かべてみましょう) 少なくとも10年後20年後にも使っていることはないと思う。 その時、ソニー製のデジタル一眼レフを買うだろうか…と自問してみると、 多分買わない、が答えである。少なくとも今予想される範囲内では。
そうなると、別メーカーのシステムを一から揃え直すしかないのかなぁ。 そしたら今持っているAマウントのレンズは全部使えなくなる。 結構気に入っているレンズもあるし、いつか買いたいと思っているレンズもあった。 が、こういう状況になると、たとえ中古でもこれ以上レンズを買う気がしなくなってしまう。
このあたりが「システム」を買う一眼レフならではの問題ではある。 レンズ固定式だったらそんなこと考えずに好きなのを買っとけばいいんだから。
カメラの世界も寄らば大樹の陰なのかなぁ。 僕はひねくれものなので、大樹に寄って行くのはあまり好きじゃないんだけど。 でも今後、人から「デジタル一眼レフは何買えばいい?」って聞かれたらキヤノンを勧めるようにします。。。
こうなるとやっぱり長く使えるのはフィルムカメラなのである。 僕がいまだに愛用しているSRT101はちょうど40年前のカメラだけどバリバリ現役だし、 先日買ったMC ROKKOR 58mmF1.2も33年前の発売だけど素晴らしい描写である。 フィルムカメラは、詰めるフィルムが発達すればそれに伴って画質も上がる。 80年代以降の電気式カメラではなく機械式カメラなら、壊れにくいし また壊れても修理がきくことが多い。 SRT101なら、丁寧に使えばあと20年くらいは使えるんじゃないかと思う。
が。 こちらはこちらで「フィルムが後何年もつのか」という、もっと深刻な話があるのだ。 この1年未満の間に、アグファとコニカという4大メーカーの内の2社が撤退してしまった。 これでメジャーで残っているのはフジとコダックだけである。 それもどこまで続くかはわからない。
もっと深刻だと思うのは現像の方。 モノクロもカラーも、現像所が採算が合わずにどんどん店じまいしているらしい。 ヨドバシとかなら自社現像もしてるけど、そっちの採算もどんどん悪化しているそうな。
そのうち、フィルムも現像所も、プロ向けにしか残らないんじゃないだろうか。 価格もめちゃくちゃ高騰して、気軽にフィルムで楽しむことなんかできなくなるだろう。 それはそう遠くない将来のような気がする。 僕の予想では遅くて5〜6年、早くて3年。もし今のような状況が10年もったら奇跡である。 多分先に35mmが無くなって、ブローニーや大判のシートフィルムなんかがプロ向けに残るんじゃないか。
この予想が大袈裟だと思う人は3年前を振り返ってみよう。 その頃たった3年後にこんな状況になってしまうと予想できましたか? いつか無くなるだろうけど、まだまだ大丈夫と思ってませんでしたか? カメラ・フィルムメーカーの人たちも含めて誰も想像すらしてなかったくらいのスピードで時代が動いているのである。
当然のことだけど、これは全てデジタルカメラの影響である。 結果をすぐに確認できる利便性、失敗したら消せるし同じメモリーカードで何度も撮れるコストメリット、 そしてパソコンさえあれば現像を待つ必要も無く、遠く離れた場所にもすぐ写真を送れる速報性。 カメラを使う人たちの底辺(特に写真が趣味でもない一般の人)と頂点(報道カメラマン)を デジタルカメラが真っ先に押さえてしまったのである。 それは言い換えると、最も母数の大きな集団と、最もフィルム消費量が大きい集団。 …デジタルがフィルムを駆逐するのは当然だ。
しかし、そのせいでカメラが家電製品やパソコンと同じ位置に入ってしまった。 元々フィルム時代のカメラのライフサイクルは4〜5年だった。 それがデジタルになるとライフサイクルは1年単位である。 当然メーカーの開発コスト負担は重くなり、経営を圧迫する。 それまではなんとかもっていた経営体力の乏しいメーカーが脱落していく。 合併してなんとか持ちこたえようとしたが、3年もたなかった。 それが今回の話。 (ニコンの銀塩からの事実上の撤退も、そちらにかける資産をデジタルに集中させるための決定。 デジカメのライフサイクルがこんなに早くなければ、フィルムカメラの製造はもっと続けたはずだ。 新開発はしないにしても。)
こうなってしまうと、「次にフィルムカメラをやめるのはどこだ?」という気にすらなってしまう。 最後までフィルムカメラを作るのはフジだろうか? それともフジ以上にフィルムにこだわっているコシナ?
だからと言って、フィルムを全肯定するつもりもないし、デジタルを否定するつもりもない。 何度も言うけど、フィルムにはフィルムの良さがあり、デジタルにはデジタルの良さがある。 見方を変えてみると、その個性の違いを楽しみながら使い分けることができるのは今の時代だけである。 それは10年前でも10年後でも不可能な、この過渡期にしかできない贅沢なことなのだ。
なので、とりあえずミノルタのカメラを使うことに対する将来の不安とか、そういうのはどこかに置いといて、 今持っているカメラやレンズを使って、今しかできない楽しみ方で楽しもうと思う。
「フィルムじゃないと撮る気がしない」とか「デジタルなんて本当の写真ではない」とか言う人もたくさんいて、 そういう考え方もありでしょう。
でも僕はそうじゃなくて「どちらもいい」と感じることができてラッキーだと思っている。 カラーネガもポジもモノクロもデジタルもポラも、どれもいいって言えるんだから。 現状最大限の選択肢の中で写真を楽しめるんだから。 (※「どれでもいい」ではない。念のため)
前にも書いたけど、僕はフィルムが好きなのではなく、デジタルが好きなのでもなく、写真が好きなのだ。 なのでガタガタ言わずに写真を撮ることにしよう。 (と、いい加減ガタガタ言った後に言ってみる)
しかし、フィルムかデジタルかにはこだわらないけど、メーカー(というか画作り)にはこだわりたい今日この頃。(笑)
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