日々あんだら
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2005年12月06日(火) コーヒーの話


緑の部屋



ウチのオカンは、成長期の子供に刺激物を摂らせるのは良くないと頑なに信じていた人で、
小学生くらいまでワサビも辛子もコーヒーも禁止されていた。
そういう風に禁止されるとかえって食べたくなってしまうのが人間というもの。
夕食に刺身が出た時に両親や祖父母が醤油にワサビを溶くのを、
そして食後にコーヒーを飲んでいるのを羨ましく見ていたものだった。
そう、僕にとってこれらは『大人の食べ物(飲み物)』の象徴だったのだ!
(で、母親の目を盗んでワサビを舐めたりね。笑)


その大人の象徴であるコーヒーを飲むことを許可されたのは中2の冬だった。
「コーヒー飲んでみる?」というオカンの言葉に、大人の階段を昇ったような高揚感を覚えたものだ。(笑)

当時からコーヒー好きだったオカンは「コーヒーはブラックに限る」「インスタントコーヒーはまずい」と常々言っていて、いつもコーヒーメーカーを使っていれていた。
(自分でドリップまではしない中途半端なこだわりっぷりが僕の親だ。笑)

両親と、僕の前に置かれるコーヒーカップ。
弟たちの前には、昨日までの僕と同じココアやレモンティー(粉末のやつ)が入ったマグカップ。
ああ、おれって大人。。。(陶酔)

うっとりしたまま砂糖を入れようとした僕にオカンは言った。
「あんたなぁ、コーヒーはブラックがいっちゃんおいしいんで」
そうだ。ブラックコーヒーを飲んでこそ大人の男なんだ!!

僕は何も入れずにコーヒーカップを手に取った。
そして、その香りを吸い込みながら口を付ける。


ズズッ。







「!!!!!!!!」



その時の衝撃をなんと表現すればいいだろう。
生まれて初めて口にしたブラックコーヒーは、濃くて苦くて、本当に泥水みたいに思えた。
なんじゃこりゃ!!
こんなもんを美味そうに飲むなんて、アホちゃうん!???


ものすごい顔をして(多分)目を上げると、1mほど向こうにオカンの顔があった。
「ふん。あんたにはまだ早いな」
その目がそう語っている。そう悟った瞬間、


「まあまあやな」


僕は平気な顔をしてそう呟いたのだった。
そう、おれはう大人やねん。今さら「砂糖とミルク入れる」とか言えるかっ!
…昔から意地っ張りな僕。(笑)


次の日も、その次の日も僕は食後のコーヒーを飲み続けた。もちろんブラックで。
後に引けるわけがない。引いたら負けなのだ。
そうこうしているうちに数ヶ月たつと、普通に飲めるようになり、
さらにその数ヶ月後にはコーヒーが大好きになっていたのだった。
「やっぱコーヒーはブラックじゃないと」などと口にする中学生。
…今思うとメッチャやなやつやな。。。



ちなみに今でもコーヒーはブラックしか飲まない。
たまにキャラメルマキアートなどを注文することはあるけれども。
普通のブレンドやアメリカンを注文して砂糖やミルクを入れることはまずない。
刺身醤油にはワサビを入れるように、ラーメンにはコショウをふりかけるように、
コーヒーにはなにも入れないのが普通になってしまったので。
最近、パラボラやR cafeでコーヒーを注文しても、スプーンすらつかずに出してくれるようになって、
ちょっとそういうのって嬉しかったりする。^^

とはいえ、そんなに味にうるさいわけでもない。
時間を置きすぎて酸っぱくなってしまったコーヒーはさすがにまずいと思うけど、
それ以外はそんなにまずいと思うコーヒーに当たったことはない。
(そもそもそんなに微妙な味の違いがわかるほど敏感な舌も持ってない)
ただ、インスタントコーヒーだけは飲めない。
あれ、砂糖やミルクを入れると普通のコーヒーとそんなに差は感じなくなるんだけど、
ブラックだとすごく嫌な後味なのである。
「インスタントは飲めないから」って言ってるのも、別に気取ってるわけではないんですってば!!
(↑昔誤解されたらしい)



ちなみに今使っているコーヒーメーカーは、実家の会社に昔から勤めていたおばちゃんが
僕の大学合格のお祝いに贈ってくれたものである。
実はいろいろもらったお祝いの中で一番嬉しかったものだった。
だって自分の部屋に自分専用のコーヒーメーカーがあるのだ。
大人の男である。(19歳にもなって相変わらずバカ)


学生時代にはこのコーヒーメーカーが大活躍だった。
昔は出不精だったので(今からは信じられへんけど)1日中部屋にいることが珍しくなかったし、
そういう時には1日10杯くらいは普通に飲んでいたものだった。


今でも1日に2〜5杯くらいは飲んでいる。もちろんあのコーヒーメーカーも現役だ。
仕事をしていて煮詰まった時や、疲れた時、部屋に帰って来てホッとしたい時。
そういう時はコーヒーの香りを嗅いで落ち着くことにしている。
今日も客先を回って帰ってくる途中、自分の顔が険しくなっているのに気付いたので、
スタバに寄ってコーヒーを1杯分、15分だけ休憩して帰った。
それだけで自分の顔が少し柔らかくなったのがわかった。
どんな時でもコーヒーの香りは僕の心をほんの少しだけ柔らかく、軽くしてくれる。




ところでこないだ実家に帰ると、オカンがコーヒーにミルクだけ入れて飲むようになっていた。
そして、「オカンも歳撮ったなぁ」と思いながら、相変わらずブラックで飲んでいる僕に向かって一言。


「あんたなぁ、ブラックは体に悪いんで」


誰のせいやと思ってんねん!!!


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