甘えた関係

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2003年02月15日(土)
DEAR MINE.

順番を告げた看守の人が、告げられて立ち上がったあたしを、怪訝なカオで見た。
隠しているのだとしても、恋人ではなさそうだし、妻でもないし、かといって子供でもなさそうだし。
続柄友達関係っていったいどこで、そしていつのだ?
何も知らない同情だけの文通相手か何かなら止めたほうがいいんじゃないか?
世間ではキレた大人の犯罪となっているがここだけの秘密だけれど実際は600万円で人を優しく殺した友人が、窓のなかから、
『ひさしぶりー』
と言って笑った。
「やーい、犯罪者ー」
と答えて笑った。
『民事で訴訟されなくてよかったわ』
と言って笑いながら、ここ出たら四十肩鳴らして別荘地に住もうかと思う、と言って、笑った。
ハタチ過ぎて親に知られずに会いに行くことが出来るようになっても、目をそらしてずっと会わずにいた。
ゆうに7年ぶり。
聴きはじめは言語を読み取ることを放棄したくなるやたら騒々しい曲、甘ったるい匂いのこもった部屋、どこが禁忌なのかちっとも見当がつかない人間たち、ふわふわというよりもぽやんぽやんとした、真面目や期待や努力の必要の裏と表がひっくり返ったような場所。
あたしはただ眺めているだけの閲覧者に過ぎなかったけれど、それでも、地面とのバランスのとり方のコツさえマスターすれば、息抜きするのにけっこう使えた。
けれど、あのとき、ちょっと覗いてみただけだったの、という言い訳が、いつでも通用しなくなる時がくる、ということを知った。
そして、今と変わらず、ゲームオーバーするくらいなら自らコンセントごとぬく主義のあたし。
決めるのは早かった。
あれから、あたしには、当然ながらどうってことはないことも含めて色んなことが起こった。
たとえば、あたしは死体を18体見て、そのなかの2人の死を悼んだ。
それで直接どうこうというわけじゃないけれど、それなりに憤りを感じ、それなりにどこか影響を受け、それなりに変わった、のだと思う。
そういうことが、きっと互いに。
15分くらい話して時間がきたことを知らされ、椅子に座ったまま最近お気に入りの紺の地に白の雪の結晶模様があるマフラーを首に巻いた。
バイバイの代わりにピースして、
「じゃあねー、またねー、人殺しー」
破顔したのを確認して、ドアを閉めた。
オーバーな表情で相手から答えを引き出そうとする怠慢はキライ。
せいぜいギャラリーでいて頂戴。
動かしすぎてこねくりまわしたようなカオになった看守にいちおー一礼をして、やたら白いその建物を出た、17時。
中途半端な白い半月。
『せめて髪くらいいじれば変わるだろうに、見かけ、全く変わってないな、それでホントに21?』
あなたのいない間に、もう染めたの、そして止めたの。
この姿が一番、チューニングしやすくて、みんなとの距離が一番とりやすいの。
ヒーローになりたがっている人に教えて、通報をさせたのはあたし。
窓のなかの友人は、そのことを知っている。
出て、会ったら、まず互いに何をしようとするのか、わかんないように一度も考えてないから、今からとても楽しみ。
妹と食べるためのたこ焼きを買って帰った。
激情は何時はしるのでしょうか。

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