甘えた関係

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2003年02月14日(金)
ドロップクッキーが好きだったんだよね

付き合いはじめて4日後に、『んー、別れない?』と切り出された相手だった。
その提案に、「んー、もうちょっと」と答えたあたしだった。
結局、高校のときの大半をその相手と付き合った。
「あたし、今日何人目?」
下から相手の頬と髪と唇と耳を同時に触りながら、聞いたこともあった。
一瞬固まった相手の動きが楽しくて、翻ってくすくすと笑った。
放り投げておいた枕は、肌にさらさらと冷たく、きもちいい。
何人もの彼女という存在をわざわざ作って、それぞれとそれなりの交際をしている相手は、あたしにとってひどく不可解だった。
そのおかげで、試み通り、相手に割いた時間内で、だいたいのほとんどを終わらせることができたのだけれど。
時々、他の彼女が他の彼女の存在を嗅ぎ分けて、それがたまたまあたしだったりして、その度にそれなりの迷惑を被って、聞いた。
「なんでそこまで恋愛に重きを置くわけ?」
恋愛は非現実。
大事なのは現実。
現実を楽しく過ごすためのスパイスなら、彼氏役は一人でちょうどいい。
後の人もすべて彼氏役にするなんて、多いと重荷、問題発生率の増加。
どーせ、アタマをこじらせるのは、感情を揺るがすのは、直接自分にカンケーすることだけなんだから、そんなのは全部邪魔。
第一、それで一人になるのが好きなんだって言われても、誰も解かりなんてしないわよ。
気がつくと、日に透けて茶色の髪の毛だけの後姿。
床に座ってベッドにもたれかかっている後姿の相手の耳たぶを、片側、ベッドに寝転がったまま人差し指と中指とで挟みながら、突き放して言う、
「こっち向いて」
相手に、楽しさ以外を求めたことはなかった。
学校や家や友達とは関係のないコミュニティから、テキトーなのを一人見繕って、長続き、それがあたしのスタイル。
誰にも話さず、一人で恋愛を玩んで、それなりに苦悩はしつつも、それ自体も楽しみの範疇で、それはチェスをしている時の気分によく似ていた。
あたし以外に重要なものはあたしのなかにはなく、あたし以外のものは全て同等だった。
時折、別れたら何をしようかな、というコトを、あたまのなかでこっそりとメモ。
それは、一人で、近鉄で少し遠めの散歩をしてみようとか、お祭りの盆踊りに参加しようとか、たわいもないこと。
けれど、メモをするたびに、付き合っている楽しさは増していった。
楽しみがすべて。
終わったらそのコミュニティごと捨てて、少し休憩。

最近そんなことを、よく思い出す。
お酒を飲むたびにそのときの楽しさが甦ってきて、こみあげてきて、誰かとお酒を飲むのは、今はちょっと危険。

恋愛に突入するべきか、それとも、ここで終わらせておくべきか、迷っている。
恋人のことを、信用したくなっている。
お気に入りじゃなくて、好きになりたくなっている。
こういうのを厭うから、止めていたのに。
気持ち悪い。
黒髪じゃなくて、茶色の髪の恋人を、作っておくべきだったんでしょーか。

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