甘えた関係

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2002年12月30日(月)
上と外

子育てに集中したいから、という理由で3年間母方の祖父母宅へ預けられていたあたしは、5歳半のときに、3年ぶりに自分の親と新しい家族である妹に、対面をした。
3年間世話をしていてくれた祖父母とあたしとはどうしても人間的に合わなかったというのと、充分な説得も説明も受けずに3年間ほとんど親と接触がなかったというのとで、親へ引き渡される日、祖父の運転する車に乗りながら、あたしはずっと泣いていた。
親に自分は待たれているという自信がなかった。
このまま捨てられるんだと思った。
それは、車窓から見える風景が、3年前連れていかれるときに眺めたものと違っていたというのもある。
それは子供の錯覚ではなかった。
実際、祖父は、全く違う道を走らせていた。
後から聞いたハナシでは、それは、あたしと離れるのがイヤだったかららしいのだけれど。
そのときのあたしは、ただ、車のなかで泣き喚いてパニックになっていた。
「お家に帰りたいの」「帰らせて」「こんなとこもういたくない」
助手席から身を乗り出して運転席にいる祖父に訴えると、
『お家なんて行ったって、誰がいるんだ?』
祖父は、横顔でにやりと笑いながらあたしに聞いた。
後から聞いたハナシでは、それは、ろくに会いもしていないヘタしたら自分よりも今まであたしと接してもいない初孫の家族に嫉妬したかららしいのだけれど。
その言葉は、あたしに深く刺さって、涙は止まり泣き喚く気力も無くなった。
夕刻、着いた家は、あたしの知っていた家ではなかった。
あたしのいない間に、引っ越していたらしい。
頭のなかでずっと思い浮かべていた前の家の風景とは、全く重ならない、新しい、見知らぬ家。
初めて見る妹という人間の顔。
久しぶりに見た両親という人間の顔。
背後に立っていた祖父が、一歩下がった。
3人の方に、あたしは歩いていった。
後方から感じる祖父の視線、前方から感じる3人の視線。
緊張のあまりぐらぐらするアタマをなんとか騙しながら、階段をのぼった。
母からの第一声は、『なにしてるの?早くはいって』だった。
教育用として祖母から貰った本のページが、脳裏にひらりとよぎった。
「1+3=4」、そう、「4」にはなるんだけれど、だけれど、「1」と「3」は別々なんだ。

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