オレは髪が薄い。はっきり言って「ハゲ」と分類される人間である。もちろん生まれたときから禿げていたわけではない。若い頃はふさふさした大量の髪のおかげでアフロヘアにできていたくらいである。そんなアフロだったオレがどうしてこんなことになっただろうか。20代のオレはよく「アインシュタイン博士みたいですね」と言われたものである。それくらいに豊かだったのだ。
ところが遺伝というのは恐ろしいもので、オレはいつのまにか亡くなった父親のように頭皮が後退していった。どんどんデコが広くなり、やがて後ろまで貫通した。近所の人から「お父さんそっくりですね」と言われるようになったのである。
今のオレは「いっそスキンヘッドにしようか」と思うほどにハゲである。ただ、スキンヘッドでサングラスとなると危険人物にしか見えないわけで、いちおうまっとうな社会人であるオレは髪を少し残している。自慢のヒゲも実は白い。その白いヒゲは黒く染毛しているのである。
ところがオレの肉体には黒々と密生している部分がある。それは股間である。陰毛である。チン毛である。これはもう剛毛で大量に密生していてとにかくフサフサなのである。色ももちろん黒い。胸毛も生えてるが、チン毛ほど剛毛でもないし、大量でもない。そういうわけでこの大量のチン毛をなんとか活かせないだろうかと思うのである。
この股間の皮膚を頭皮に移植できないのだろうか。そうすれば黒々と密生した剛毛を頭頂部に生やすことが可能なはずだ。そしてオレと同じ男性はたくさんいるはずである。どうしてそんな技術がないのか。あるいはオレが知らないだけなのか。外国に行けばそういう怪しい手術をしてくれる国があるだろうか。
チン毛を頭に移植した結果として陰毛がなくなっても全く困らない。別に人に見せる場所でもないし、旅行の時に温泉の大浴場に入っても男湯では他人の股間などたいして誰も気にしていないから無毛でも関係ない。
股間のチン毛の生えてる部分というのはけっこう広い。だから頭皮のハゲの部分をカバーするのに十分である。これをうまく頭皮に張り付けることによって、そして頭皮を切り取って股間に張り付けることで、皮膚交換という方法がうまくいけば頭髪を再生できるのである。
「ハゲは治せない」と力説する人はよく孫正義を根拠にあげる。孫正義ほどの富豪でも禿げているわけだから、いくらお金があってもハゲが治せないことは絶対的な真実である。もちろん孫正義は容姿を気にしてないだけという反論はあるだろう。しかし投資家達は9984ソフトバンクグループ株の名称を単に「ハゲ」と呼ぶこともまた事実なのだ。
オレはもう頭髪のことでクヨクヨしない。失われたモノを惜しんでも仕方ないし、今更女性にモテようとも思わない。オレのことを好きになってくれる女性は今の禿げたオレを愛してくれるわけで、そこに毛が生えたか否かは全く問題ないのである。
ただ、このハゲのせいで実年齢よりもかなり上に見られるのは悲しいのである。オレはまだ50歳くらいの時にフレンドリーというファミレスで「シニアカードいかがですか?」と60歳以上の割引カードを勧められたことを未だに黒歴史として覚えているのである。なんと失礼なことだろうか。しかもオレが「年齢確認必要ですか?」と訊いたら「大丈夫です」と言われたのだ。どれだけオレはジジイに見えたのかと悲しかったのである。でも結局その時にシニアカードを受け取って使い続けたのである。モーニングが毎回50円引きだったのである。
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