オレは異常に嗅覚が鋭い。たとえばその部屋で1時間前に誰かが屁をこいたとする。オレの嗅覚はそれを嗅ぎ当てるのだ。それで何度も妻に「おまえ屁をこいたやろ!」と指摘してそのたびに喧嘩になったという苦い思い出がある。妻はオレが指摘する度に「自分の部屋で屁をこくのくらい自由やろ!」とキレたのである。
他人の体臭にも敏感であり、喫煙者かそうでないかはすれ違うだけでわかる。タバコの匂いは苦手なので、エレベーターなどの密室で喫煙者と一緒に閉じ込められると最悪である。それで商業施設などではできるだけエスカレーターや階段を使うのである。
特に苦手なのは「汗臭い男」である。汗臭い女にはさほど不快感があるわけではないし、むしろその匂いが好きかも知れない程度に変態なのだが、とにかく汗臭い男は無理だ。そしてその汗臭さが集団となるともうそれは暴力だと思う。
上高地に行くと、これから登る人と降りてきた人は明らかにちがう匂いがする。山に入ればもちろん風呂には入れないわけで、何日も山にいた人達は強烈な体臭を放っているのである。土産物屋などでそうした「山を下りてきた集団」に遭遇すると、その強烈な臭気のためにオレの嗅覚は破壊されてしまう。感じる限度というか閾値を超えてしまうともう嗅覚センサーが破壊されてしまうのである。
オレの家は動物を飼っていないので、我が家にいる人間以外の動物はおそらく少数のゴキブリくらいだと思うが、猫や犬を飼ってる家は動物のあの「獸臭」がほのかに漂っている。家によって違いはあるが、その匂いはもちろん人にもつくわけで、オレは初対面の人がペットを飼ってる可能性まで嗅ぎ分けることができるのだ。ただ、犬と猫の違いまで分かるわけではない。
このように匂いに極度に敏感なオレは、そういうわけで動物園というのはあまり好きではない。水族館はそうでもないが、水族館でもやはり海獸と呼ばれるトド、アシカ.セイウチ、アザラシなどは臭いと思っている。
もう10年以上前になるが、犬並みの嗅覚を持つ女性刑事が主人公の「デカワンコ」という漫画がドラマ化されて、オレの大好きな多部未華子さんが主演だったことがある。それはオレの心の中で、過去に見たドラマの中でもかなり上位にランクされるだろう。
オレが知らない人をあまり自分のクルマに乗せたくないのは、その匂いを感じることが理由の一つだと思う。自分の嫌いな匂いを発する人は乗せたくなく.逆に自分が好ましいと思うような体臭の人なら何の抵抗もないのである。実に勝手なことだが、人とはそういうものである。男女の好ましさのことも、もしかしたら案外その体臭を気に入るかどうかということも深く関わってるのかも知れない。暗闇で相手が見えなくてもそれが誰かを匂いで当てるというゲームがあれば、オレはかなり強いという自負がある。ついでに言うならオレは足音で人を区別することもできるのである。足音だけで「あいつが来たな」とわかってしまうことはきっとかなりの人が経験してるだろう。
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