2022年03月14日(月) |
教育民営化の先にあるもの |
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大阪南部に阪南市という人口5万人くらいの小さな市がある。その市には泉鳥取高校という公立高校があるのだが、入学試験が3年連続で定員割れしたら廃校にするという大阪府独自のルールによって、来春の募集停止が決まっている。
大阪府は維新の会が府議会で多数派となってからは「身を切る改革」の一環として「府会議員定数の削減」「公立高校の統廃合」という政策を推進してきた。府会議員定数を削減するにあたっては一人区をどんどん増やして自党に有利になるような区割りを作り、また公立高校に行く生徒が減るように「私学授業料完全無償化(実は所得制限あり)」という宣伝を盛んに行った。結果として公立高校に進学する生徒は年々減少し、もともと入学試験の偏差値が低く、通学に不便なところにある高校は入学試験が定員割れするようになってしまった。
泉鳥取高校の入学試験の偏差値は38である。大阪府立の高校の偏差値ランキングの中では残念ながら最底辺を形成する高校ということになる。お隣の岬町にある岬高校が偏差値38,泉南市のりんくう翔南高校が偏差値41である。大阪府の最南端の方までわざわざ他の地域から受験しに来る者はわずかである。だからこのような数字となって表れているのだ。
そうして偏差値38の高校を廃校にした場合、そこに入学する予定だった学力の低い生徒たちはどこに行けばいいのだろうか。学力の低い生徒の抱えた様々な事情に向き合い、大学への進学は困難であってもきちんと高卒で就職できるように指導する高校というのは地域に必ず必要ではないのか。定員を満たせないのなら募集人員を減らすとかしてなんとか存続する道はなかったのだろうかとオレは思うのである。
学力が低く指導が困難な生徒たちは家庭環境にも恵まれてない場合が多い。世帯収入が低くて私立高校に行く余裕がない場合もある。大阪では私立高校の授業料を補助する制度があるが、補助されるのは授業料だけである。それ以外にかかる費用はやはり私立の方が高いということになる。また家から離れた私立高校に通学する場合、定期代などが余分に掛かることとなる。それは生活に困窮する世帯にとってかなりの負担である。地元の高校だから徒歩や自転車で通学できるということは大きなメリットである。地元校がなくなったら遠い学校に電車で通学しなければならなくなるのだ。
大阪維新の会は「身を切る改革」と称して公務員数を削減し、府や市の財産を民間に売却し、行政組織のスリム化を目指した。コロナ禍にあっても保健所の職員を増やそうともせず、「有事に備えたら平時に人が余る。ただ座っているだけの人に給料は払えない」と吉村知事は語った。
高校が減れば、教員数は減らせる。大阪府立高校の校長の中には定年後の再雇用の方もたくさんいる。少子化が進行するのだから、それに合わせて公教育体制もスリム化してということなんだろう。新規採用を抑えて、専任講師などで定員を充たし、いつでも解雇できるようにしているのが大阪府立高校の現況である。
かつてオレも大阪府立高校の教員であった。希望や能力を考慮しない人事異動の方針に対して反発したオレは、別の高校への異動を目前にした3月28日付けで退職届を提出して公務員を辞めた。おそらくオレが異動する予定だった高校では、クラス担任などの様々なハードな仕事が待っていたのだろう。オレが大阪府教育委員会に訴えたかったのは、「こんなやり方ではやる気のある教員がどんどん辞めますよ」ということだった。そうした抗議も空しく、オレが辞めた後はさらに労働環境は悪化し、橋下徹が知事になると今度は他の公務員同様にボーナスもがんがんカットされてしまったのである。
公教育を立て直さないといけないのに、大阪では貴重な予算を「塾代助成」というバラマキ政策に使っている。ただの選挙対策である。それに買収された子育て世代は維新の会に投票することになり、結果的に「カジノ誘致」という大きな代償を払わされるのである。1兆円以上の借金は将来の大阪市民・府民にのしかかかることとなる。
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