2022年01月30日(日) |
節分の鬼と『鬼滅の刃』 |
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日曜日夕方に放送される『笑点』で、出演者が鬼のコスプレをしていた。アフロヘアにして角をつけるというコスプレである。鬼がそうしたスタイルであるというのはいつから始まったのだろうか。もうすぐ節分である。
そもそも「鬼」とは何か。漢文でも「鬼」という語は出てくるがそれは日本語での「幽霊」の意味で用いられる。しかし日本で「鬼」というと、桃太郎に退治される存在であり、角を生やした悪党である。この伝統的スタイルの鬼に対して、新たな概念を与えたのが大人気のアニメ『鬼滅の刃』だった。そこに登場する鬼はさまざまな姿をしていて、従来の鬼とは全く違ったものだった。その姿を見た幼い子は本当に鬼を恐れるようになるだろう。もしも節分の日にお父さんが『鬼滅の刃』に出てくる上弦の鬼のコスプレをしたら、子どもは恐怖のあまりオシッコをちびってしまうかも知れないのである。
節分の日に鬼に対して人間が用いる武器は「豆」である。どうして豆なのか。そしてそんなものを投げつけられてもちっとも痛くないのに鬼は逃げるのである。「福は内、鬼は外!」と言われて鬼は人間社会から追われるのである。居場所を与えてもらえない悲しい存在が鬼なのだ。そこにオレは社会に排除された人たちや、戦争などで故国を追われた流浪の民の悲劇を重ねてしまうのである。そこで「鬼さんがかわいそうだ」という視点を持てる子どもがいれば、その子はきっと心優しい人間として成長していくだろう。
オレが大学生の頃、京都大学のキャンパスに隣接する吉田神社の節分祭というのは楽しい行事だった。東一条通をぎっしりと屋台が埋めていて、そこで買って食べ歩きするというのが楽しみだった。昨年はこの屋台は設置されず寂しい節分だったが、今年は数は減らされるものの復活するらしい。残念ながら平日なので行けないのだが、京都の風物詩だけに早くいつもの姿に戻って欲しいのである。
京都大学ではその頃ちょうど後期試験が行われている。本部構内と吉田キャンパスの試験の静寂に挟まれた東一条通だけが全く異世界のように賑わっていたのである。そこでオレはちょっとしたおやつを買って食べ、また試験の教室に戻るという感じで後期試験の時期を過ごした。
スーパーのお菓子のコーナーにはバレンタインデーのチョコレートが並ぶわけだが、節分の前後にはほんの少しの期間節分用のお菓子が並ぶ。オレは京都の豆政というお店の「五色豆」が大好きなんだが、京都で節分の時に小袋に入って参拝者に配布される「豆」は基本的にこの「豆政」のものである。
水木しげるの功績は、民話や伝承の中に存在した「妖怪」をメジャーなものにして紹介したことである。そうして多くの妖怪が市民権を得ることとなってついには『妖怪ウオッチ』なるアニメまで生まれた。もしも水木しげるがいなかったら『妖怪ウオッチ』もなかったとオレは思っている。
かつての民話や伝承の世界にあった鬼の姿を現代(というかあの世界は大正時代あたりなんだが)にリアルに描き出した『鬼滅の刃』はまぎれもなく世界に誇れるアニメである。その戦闘シーンの鮮やかさや迫力は従来のアニメとは一線を画している。あの動画の制作過程はどうなっていたのだろうかとオレは感嘆するのだ。
日本旧来の行事である「節分」とコラボした『鬼滅の刃』関連商品がコンビニやスーパーの店頭に並んでいる。商魂たくましいと言えばそれまでだが、子どもたちはどんな気分でそこからお菓子を選ぶのだろうかとオレは思うのである。好きな味ではなく、好きなキャラが描かれたものを買うのだろうかと。
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