2021年08月21日(土) |
杉原千畝はいなかった・・・ |
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杉原千畝がなぜ偉大なのか。彼は国の方針も自分の職務上の立場とも無関係に多くのユダヤ人の命を救ったからである。そして彼のような行動のできる人物はめったにいない。だからこそ彼は偉大なのである。アフガニスタンには残念ながら杉原千畝はいなかった。それが今回明らかになったが、それもまた事実なのである。
アフガニスタンがタリバンに制圧された。米軍の支援を受けたはずのアフガニスタン政府軍の兵士たちはろくに戦わずに逃げ、タリバンによる迫害を恐れた多くの人々が空港に殺到した。アフガニスタンに駐在していた日本の外交官は現地スタッフを残して自分たちだけ逃亡した。現地駐在の日本の外交官に対してタリバンが略奪や暴行を行う可能性がないとは言えないが、無政府状態になることを恐れたのかさっさと逃げ出したのである。
杉原千畝はドイツ軍が迫る中、リトアニアのカウナスにあった領事館で日本経由で出国できるように大勢のユダヤ人のために日本の通過を許可するビザを書き続け、多くのユダヤ人の命を救ったのである。ところが今回アフガニスタンの大使館に残留し、タリバンの迫害から逃れるために日本に脱出できるような命をビザを発給するような日本の外交官はいなかった。カブールの日本大使館にいた職員はみんなさっさと逃げてしまったのである。
タリバンが侵攻してきたことで、首都カブールの治安が悪化すると言われている。武装したタリバン兵が市民に対して略奪や暴行などを行えばたちまち秩序は失われ、無政府状態になるだろう。報道されていないので情報が入ってこないが、地方都市ではもしかしたら武装したタリバン兵が乱暴狼藉を働いてるのかもしれない。かつてのタリバン支配下で女性から教育の機会が奪われ、働くこと許されなかったイスラム原理主義の世界を思い出せば、タリバン兵士たちがその価値観を持っていてもおかしくない。少女に銃を突き付けて「この女は今日からオレの妻だ」と拉致していくような行為があったとしてもおかしくない。
20年かけてアフガニスタンは民主化してきた。しかし、タリバンの報道官ははっきりと民主主義的な価値観との決別を宣言している。女性の仕事が奪われるということがすでに起きている。今後は参政権も奪われてしまうのだろう。政治の実権を握ったタリバンが民主主義の側に譲歩するとは思えないのである。
イスラム原理主義の立場と西欧の民主主義の価値観は相容れない。タリバンは女性を男性と対等の人間とは認めていない。ただ、そうした情報はタリバンを「悪」と断定したい側からの偏見に満ちたものなのかも知れない。国から逃れるために空港に殺到していた群衆を見ると「やはりタリバンは悪なのか」と思ってしまうわけだが、話し合いの通じる相手ならば国際社会も承認しだすだろう。
日本政府は今後どう判断するのか。そもそも逃亡してしまった外交官たちはタリバンに関して情報収集できていたんだろうか。タリバンとの交渉窓口を作る努力はしていたのだろうか。杉原千畝のような方は今の日本に一人でもいるのだろうか。
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